CVEM 社団法人 日本内分泌学会分科会|日本心血管内分泌代謝学会
ホーム
学会の歴史
歴代会長と学会開催日程
理事長あいさつ
現役員
学会会則
研究賞について
入会案内・各種手続き
学術総会のご案内
会員連絡号

ホーム > 理事長あいさつ

理事長あいさつ                                       

CVEMの継承と展望「ホルモンが紡ぐ臓器連関」

東京慈恵会医科大学内科学講座循環器内科
吉村 道博

このたび、日本心血管内分泌代謝学会(The Society of Cardiovascular Endocrinology and Metabolism, The CVEM Society)の第9代理事長を拝命致しました、東京慈恵会医科大学内科学講座循環器内科の吉村道博です。副理事長の九州大学大学院医学研究院病態制御内科学 小川佳宏教授と共に、本学会の発展に尽力させていただく所存でございますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。

1984年、心房性ナトリウム利尿ペプチドの発見を契機に、20世紀末は心臓血管から分泌されるホルモンの発見が続きました。この分野における日本の研究者の貢献は大きく、世界的にその先駆的な役割を果たしました。これらの功績に基づき、内分泌学の新たな領域であるCVEMが興隆し、1994年と1995年には、日本内分泌学会学術集会のオフィシャルの会合としてCVEMシンポジウムが開催されました。この流れを受けて、1996年にはCVEMが設立され、1997年に第1回総会が開催されました。

それから時を経て、第18回(2014年)までCVEM単独での総会開催を続けて参りましたが、その後は少しずつ開催方法の変遷が続きました。第19回(2015年) 北村和雄教授が会長の時に、当該年度の循環器関連の4つの学会の学術集会と合同開催することとなり、それを心血管代謝週間(Cardiovascular and Metabolic Week, CVMW)と称しました。循環器関連疾患に焦点を当てた多くの研究者が参加し、新しい学問的および人的な交流が得られました。引き続き、CVMWという形で、小室一成教授が会長の第20回(2016年)、楽木宏実教授が会長の第21回(2017年)と続きました。一方で、CVEMは日本内分泌学会の分科会の一つであり、日本内分泌学会の中での新たな展開も検討されました。そして、第22回(2018年)伊藤 裕教授が会長を務められた時に、中里雅光教授が会長の第91回 日本内分泌学会学術総会と合同で開催されました。この会には多くの参加者が集い、新たな展開となって有意義でした。第23回(2019年)は柏原直樹教授が会長をされて元のCVMWの形式で開催されました。第24回(2020年)は私、吉村が会長を務めましたが、コロナ禍となり開催の延期が余儀なくされ、結果的に2021年3月にCVMW形式のWeb開催となりました。第25回(2021年)は児島将康教授が会長で、引き続きCVMW形式のWeb開催となりました。第26回(2022年)は向山政志教授が会長を務められましたが、コロナも少し落ち着いたこともあり国立京都国際会館で対面での開催が実現しました。この会は、伊藤 裕教授が開催された第29回 国際高血圧学会と同時期・同会場での開催となりました。その後はやはりコロナ禍は収まらず、開催形式の議論が続きました。その結果、第27回(2023年)は毎月1回Web開催をするという大きな変革が行われました。下澤達雄教授が会長で開催され、我々会員は貴重な総会の形式を体験できて有意義であったと思います。

CVEMは、心臓や血管における内分泌や代謝研究の促進を謳った学会であり、この分野の研究者や医師が一同に会して活発な議論がなされて参りました。発足以来、大きな役割を果たしてきたことは、会員の皆様が強く実感されていることと存じます。一方で、CVEMには課題もあります。ホルモンという観点からは皆さんが同じように興味を持っていると思いますが、疾患となるとそれぞれの対象がやや異なります。最近は臓器連関ということが大きな話題であり、対象疾患を絞らないことに意味があるとも言えるのですが、一方で学会の外から見ると、あるいは若い人たちから見ると、ややわかりにくい学会であるとの印象があるようです。若い学会員があまり増えていないことは大きな課題であります。先に示した通り、第19回からの総会開催のやり方の変遷を余儀なくされたのは、このような事情が背景にあったとも言えます。

これらの課題に対処するためには、CVEMの精神を再確認しつつ、広めていく必要があります。「内分泌至上主義」、この言葉は前理事長の伊藤 裕教授が提唱されたものであります。私はその理念を引き継ぐものとして「ホルモンが紡ぐ臓器連関」というスローガンを掲げたいと思います。私は心不全を専門としていますが、心不全は心臓のことだけを考えていてもあまりその病態の理解は進みません。全身からアプローチする姿勢が必須であり、そこにはホルモンが極めて重要な役割を演じています。幸いにも最近ではCVEMが率先して育んできたナトリウム利尿ペプチドを応用したARNIが世に出て多くの循環器系の医師がホルモンの重要性を実感しています。さらにはSGLT2阻害薬の重要性の認識も一気に広まり、代謝への興味が湧いているようです。そして、糖尿病や肥満の領域ではGLP-1受容体作動薬が躍り出ていますが、循環器系の医師もこれまで無縁と思っていたその世界に強い興味を示しているように思えます。ホルモンあるいは代謝の重要性を医師の専門性を問わず、その理解が広く進んでいることは喜ばしいことで、まさに「CVEMの本領発揮の時」が到来したとも言えるのかもしれません。

さて、CVEMには複数の優れた賞が準備されています。高峰譲吉賞およびその研究奨励賞、トランスレーショナルリサーチ研究領域の中尾一和賞、システムバイオロジー研究領域の永井良三賞があり、他にもYIAがあります。 また新たな研究奨励賞も企画されています。 若い研究者が切磋琢磨して研究に邁進できる仕組みを整え続けているつもりです。

これまでのCVEMの輝かしい歴史を築いてこられた多くの先輩方のご指導を仰ぎながら、本学会の会員の皆様とともにCVEMが新しい医学の立ち位置を模索して、それを確固たるものにできるように努力したいと思っております。何卒、皆様方のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。

  日本心血管内分泌代謝学会事務局
〒600-8441 京都市下京区新町通四条下る四条町343番地1 タカクラビル6階 一般社団法人日本内分泌学会事務局内
TEL:075(354)3562 FAX:075(354)3561
Eメール:cvem@endo-society.or.jp