研究代表者あいさつ

gazou  日本移植学会理事長の江川裕人です。専門は肝移植です。京都大学と米国で肝移植を1300例経験して、2011年4月から東京女子医科大学消化器病センター外科に着任しました。女子医大の成人肝移植を立ち上げ、関東の移植医たちと力を合わせ東京圏の移植医療を元気にする活動に力を注いできました。2015年に日本移植学会理事長に就任しました。移植学会といえば臓器提供推進と移植手技の保険収載が主な活動でしたが、それらに加えてアカデミアらしく、私のライフワークである抗体関連拒絶克服を学会活動として若手を中心にチームを作り取り組みました。血液型不適合移植におけるリツキシマブの適応拡大に成功した経験を生かし、HLA抗体に対する脱感作と治療におけるリツキシマブの適応拡大と抗体検査の保険収載、ガイドライン作成を目指し動き始めたところ、幸運にもAMEDの公募があり「臓器移植における抗体関連拒絶反応の新規治療法の開発に関する研究」が採択されました。3年間で全目的を完成し補正予算で1000症例の遺伝子多型レジストリーまで作成することができました。2023年にリツキサンの適応拡大が予定されています。
 2019年10月に理事長職を満期終了するはずでしたが、役員の先生方に定款変更してまで留任を求められましたのでもう4年勤めさせていただくことになりました。この執行部のミッションは「未来へ向けての地固め」です。二期目のミッションとして、いくつかの目標を掲げましたが、その中の一つに、移植後長期管理体制整備があり、科学技術分野では遺伝子多型と臨床情報を組み合わせた術後管理ロジックの構築、社会的分野では移植内科医育成を課題として掲げました。コロナ禍の中粛々と活動を始めておりましたところ、公募名「移植臓器の長期成績生着向上、合併症克服を目指した移植後フォローアップ体制の確立を目指す研究」が公募され、応募したところ幸運にも採択されました。
 この研究事業が、患者さんが高度の医療を安全に受け末長く安心して社会の一員として暮らすことができるための基盤となる研究事業となると確信しております。