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医局員の声Voice of members


田口 慧

東京大学大学院
平成20年 東京大学卒業
平成22年 入局

 このページに辿り着くような人は、おそらく泌尿器科という科は決まっていて、医局選択に迷っている人達だろうと想像するので、まず東大泌尿器科の特徴を簡単に説明します。一言で言えば、当科は非常に「懐の深い」科です。東大の中には「東大生以外お断り」のような非常に感じの悪い科もありますが、当科はその真逆であり、毎年平均8人程度入局する内の7~8人が他大生です。さらに、入局後の処遇にも全く区別はなく、非常にfairな科と言えます。現在の当科のスタッフ陣(講師以上)を見ても、半数(6人中3人)が他大出身者であり、そのような科は東大全科を見渡しても存在しません。泌尿器科には、癌、排尿、結石、感染症、腎不全、性機能、小児など多彩なテーマがあり、スタッフ陣には各々のspecialistが控えています。初期研修終了後、専門医を取るまでは、これらの分野について幅広く学ぶことが求められますが、人材の豊富な東大泌尿器科は、そのような「間口の広い」研修に最適な環境です。また専門医取得後に、自分の専門分野(subspeciality)が見えてきた後でも、身近に各分野のspecialistがいて密な指導を受けられることは大きなメリットです。このような恵まれた環境で、東大生と他大生がイーブンな条件で切磋琢磨して高め合っているのが、現在の東大泌尿器科と言えます。また、関連病院の多くが都内近郊に集まっていることも、当科の大きな強みです。東京で泌尿器科医として一流を目指したい、という野心のある若手医師にとって、これほど適した環境は他にないと断言できます。もちろん上に昇るだけでなく開業を含めた様々なキャリアパスが存在しますが、当科の縦横の幅広い繋がりから、人生の節目節目で様々なアドバイスやサポートを得ることが可能であり、そういう意味でも当科は非常に「懐の深い」科であると言えます。

 一方で、私自身は学生時代には特に泌尿器科に入ろう、とは決めていませんでした。運動部で練習に明け暮れていて、そもそも勉強や進路にそれほど興味がなかったのですが、漠然と「内科系より外科系の方がいいかな」位に考えていました。そんな時、学生実習で三井記念病院部長(当時)の富永登志先生が東大に出張講義に来ており、「三井には初期研修でウロコースという専門コースがある。興味があるなら是非来ないか」とお声掛けを頂きました。その大らかな人柄に、何となく“ring the bell”した私は、迷わず三井を受験し、優秀な成績で(?)無事ウロコースに合格しました。初期研修の2年を含めて足かけ3年半三井に勤務し、泌尿器科特有の処置や内視鏡手術の基礎を叩き込まれました。当時は研究をしようなどという気は全くなく、日々の臨床に励むだけで精一杯でした。東大卒ということで、特に深く考えずに「入局」はしていましたが、それほど大学との繋がりを意識することは無く、どちらかと言うと「難しい研究をやっていたり、怖い先生がいっぱいいそうだな」とネガティブな印象を抱いていました。しかしながら、4年目の夏に大学に呼び戻されて意識は一変しました。最先端の手術・治療(2011年当時、保険収載前のダ・ヴィンチがちょうど導入されるタイミングでした)、教育体制、アカデミックな物の見方等、現在の泌尿器科医としての価値観の土台のようなものをここで身に着けさせられました。また、同年代の様々な経歴の泌尿器科医と、仲間意識の中で一緒に働くことができたのも大きな財産となりました。大学勤務はわずか9ヶ月でしたが、「自分はこの組織に所属していて、ここを起点に活動していくんだ」という強い帰属意識(と安心感)が芽生えました。大学勤務後は、東京逓信病院に2年間勤務し、主に開腹手術の腕を磨き、ここで専門医も取得しました。臨床が一区切りついたので、大学院に進学して研究することを勧められました。これまで頑張ってきた臨床を離れて未知の研究の世界に飛び込むのは正直とても怖かったですが、医局で研究室を主宰している福原浩先生(現 准教授)から幸いにもお誘いを頂いたので、現在は「ウイルス療法」という癌に対する新規治療の研究に取り組ませて頂いております(詳細は当科HPを参照)。

 自分の経歴を振り返ると、医局の「懐の深さ」のお陰で、これまで歩いて来られたのだと実感します。もし入局を迷っている若手の先生がいたら、自信を持って当科に入ることをお勧めしますし、一緒に頑張っていけたら素晴らしいと思います。勧誘会や見学に来て、もし雰囲気が“ring the bell”するようであれば、ぜひ入局を考えて頂ければ幸いです。

(平成28年8月 記)