医局員の声Voice of members
竹島 雄太 東京大学大学院三年生 |
H15年入局の竹島雄太と申します。僕らの代はスーパーローテート制に移行する前の最後の年度のため、就職と同時に入局いたしました。学生時代の臨床実習で泌尿器科を回った時に、内科的治療と外科的治療のバランスが非常によく取れている科だと感じたことが一番の志望動機です。
いわゆるマイナー科の長所として、専門領域が限定されるが故に薬物療法から手術療法まで、外来初診から終診まで、1人の患者さんに対し主治医として主体的に治療に取り組めるというものが挙げられます。
泌尿器科ではこのような長いスパンでの患者さんと二人三脚の治療が良く体現されていると強く感じました。また、泌尿器科にも外科領域としての多種多様な手術が存在しますが、その多くが3~4時間以内の比較的短時間で終了するものです。これは一つの施設で多くの方に治療を施せる、手術中に最大限の集中力を保ちやすいという直接的な利点だけでなく、病棟で長期治療中の方とのコミュニケーションの時間を多く持てることも意味します。特に癌治療はホスピスなどの存在からも示されるように、治療中のQOLが非常に重要である領域です。治療による副作用や癌の付随症状と常に闘う癌患者さんの場合は、外科手術のみならず化学療法や放射線治療、疼痛コントロールの薬物療法、精神面のケアなど様々なアプローチでの総合的な治療計画が必要となります。これには日ごろから患者さんの訴えや悩みを把握し、細かい変化にも迅速に対応する事が必要になります。外科医としては手術をおろそかにするわけにはいきませんが、手術のみに忙殺されることなく時間的余裕を持って患者さんとのふれあいの時間を設けられることは癌治療自体の質の向上にもつながると考えられ、泌尿器科では必要以上の分業をせず一人の主治医がこれらをこなせる環境があると感じました。入局後は大学病院および関連病院で6年間の臨床経験を積みましたが、その当初の泌尿器科の印象は裏切られることはなく、非常に患者さんと近い距離で医療を行えていることに充実感を得ました。
現在は専門医の資格を取得したことを契機に大学院に進学し医学研究を開始しております。医療の発展には基礎医学が欠かせないことは言うまでもなく、実際に臨床の現場で現存の治療法では対抗できないようなケースも多々経験したことで、まだまだ存在するそのような泌尿器科疾患のハードルをクリアしていくような動きに携われればと考えるようになりました。私の配属された研究室はヘルペスウイルス1型をベースに癌特異的に殺細胞効果を発揮するよう遺伝子改変したウイルス治療を研究しています。現在脳の膠芽腫に対し臨床治験を実施中、今後前立腺癌に対しても治験を計画中です。研究者としてはまだまだ駆け出しの段階ですが、いままで臨床しか経験してきていない立場のものとしましては今まさに臨床に直結しようとしているこのような研究に関われたことを大変幸運に感じます。医局の先生方、関連病院の先生方の多大なるサポートをいただきながら、研究室の先生方のもとで忙しくも充実した研究の日々を送っています。
泌尿器科への就職や当医局への入局をご検討の先生方、学生の方にはもっともっと泌尿器科の魅力をお伝えしたいのですが、とてもここに書ききれるような分量ではないので、ぜひローテートや実習・見学で一度ご体験いただければと思います。将来的にともにお仕事ができる日が来ることを楽しみにしお待ち申し上げております。