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医局員の声Voice of members


中村 真樹

東京大学医科学研究所特任研究員
平成13年 東京大学卒業
平成13年 入局

 卒業10年目の中村です。大学6年の夏頃から入局先を考え始めましたが、手術に興味があった私は外科、産婦人科、泌尿器科を選択肢に考えていました。その三つの科で迷う中、当時の北村唯一教授、簑和田助教授、土井医局長をはじめとする先生方に飲みに連れて行っていただき、熱く誘っていただいたのが入局の最終的なきっかけになったと記憶しています。泌尿器科に入局しての印象は、先輩の先生方がとてもフレンドリーであり、教室全体の雰囲気が明るいということでした。日中の手術や診療はもちろん真剣に取り組み、医局では和気藹々として気軽に飲みに誘っていただける、そんな雰囲気のおかげでスムーズに臨床をスタートさせていただけたと思います。
 その年の7月からは、同期入局6人の希望もあり、焼津市立病院で麻酔科の研修を6ヶ月させていただきました。当時初期研修制度の無かった私たちにとっては、この麻酔科研修はとても重要な経験で、その後の自家麻酔手術などに生かされています。そして翌年1月からは東大病院、埼玉社会保険中央病院(さいたま市)、関東労災病院(川崎市中原区)、NTT東日本関東病院(品川区)で順に勉強させていただき、それぞれ特色のある先生方から多くの症例と手術を勉強させていただくことができました。泌尿器科の臨床では前立腺、腎臓、膀胱、精巣悪性腫瘍の手術および化学療法から、前立腺肥大症、頻尿、尿路結石等の疾患まで広く診察していかなくてはなりません。大学以外の関連病院で多くの症例を、時には他大学の先生方と一緒に勉強させていただくことは医師としての技術の幅を広げるいい機会だと思います。

 6年の臨床の後泌尿器科の専門医の資格を取り、その後平成19年から大学院(東京大学大学院医学系研究科外科学専攻泌尿器外科学)に進学させていただきました。研究先はNTT東日本関東病院の亀山周二部長にご紹介いただいた東京大学医科学研究所細胞療法分野(北村俊雄教授の研究室)を選び、癌抑制遺伝子の機能解析という基礎の分野の研究をさせていただくことができました。基礎の研究は臨床とは異なり、すぐに結果が出るというものではありません。ましてや期待した結果が出ることは非常に稀です。臨床で患者が治癒していくことに意義を見出していた私にとっては辛い時期もありましたが、細胞内のシグナル伝達、各種基礎研究の実験手技、マウスを用いた発癌モデル実験などの勉強をさせていただけた経験は、今後臨床に復帰したときに広い視野で医学を見ていくことにつながるのだと思います。また、この間少し離れたところから医療現場を眺めることができ、これまでの自分の臨床、当たり前だと思ってやっていた事に反省点を多く見出すことができたのも大学院に進学したメリットと考えています。

 現在私は大学院を卒業して学位(医学博士)を取得し、本間教授のご高配を賜り秋から留学をする予定です。留学先としてはスウェーデン・ストックホルムのカロリンスカ研究所を考えており、そこでは血管新生阻害薬の研究を行う予定です。泌尿器科の臨床をしている頃から、癌の発生・転移・増殖に興味を持っていました。基礎の分野で得た知識や実験手技を生かし、すこし臨床に近づいた研究テーマで癌の発生や転移のメカニズムに迫る研究ができればと考えています。

 泌尿器科は悪性腫瘍手術から化学療法、良性疾患まで広く扱う大切な診療科のひとつです。また本間教授が立ち上げられたcontinence医学も高齢化の進む日本でとても重要な学問になっていくことは間違いありません。学生の皆さん、そして臨床をスタートした研修医の皆さん、泌尿器科の臨床・研究レベルのさらなる向上には皆さんの力が必要です。ぜひ泌尿器科に興味を持ってみてください。僭越ですが、一緒に勉強できることを楽しみにしています。