ご挨拶
この度、第36回 和漢医薬学会学術大会を、2019年8月31日(土)、9月1日(日)の2日間にわたり、富山市の富山国際会議場におきまして開催する運びとなりました。
和漢医薬学会の目的は、和漢薬の資源、品質管理、作用機序、臨床研究などについて科学的視点から最新の知見を討議し、基礎と臨床の橋渡しをすることにより、人類の健康と福祉の増進に貢献する事であります。本学術大会では、和漢薬を様々な形で研究の対象とする薬学者、医学者、医師、薬剤師などが一堂に会して研究情報の交換を行うことにより、新たな治療学体系を構築し、その成果を社会に還元することを目的としています。
現在日本では、漢方医学と現代医学の其々の特長を活かした補完的で融合型の世界に誇るべき良質な医療が行われています。しかし、長年の臨床医学的経験知に基盤を置く和漢薬治療は、近年の先進国を中心とした劇的な疾病構造の変化、特に生活習慣病、認知症などの加齢性疾患、アレルギー・免疫疾患に代表される複数の要因が複合的にその発症に関与する多因子性疾患に対し、十分には対応しきれていません。和漢薬は多数の分子メカニズムを有する複合薬物であり、多因子性疾患に対して大きな可能性を秘めていますが、複雑系である生体でどのように作用するかを解明する基盤技術は未だ充分には開発されていません。従って、これまでにない革新的なコンセプトに基づく複雑系解析技術や研究方法を開発しなければ、和漢薬の可能性を実臨床で科学的かつ有効に利活用する事は出来ないと考えられます。
しかし、最近の様々な網羅的解析技術や数理科学的解析方法の劇的な進歩、情報科学や計算科学のかつてないスピードでの発展により、複雑系の解析は劇的な展開を迎えており、和漢医薬学研究にも新たな道が拓けてまいりました。劇的な疾病構造の変化に対応する和漢薬治療を科学的合理的に行う、脱セレンディピティ、すなわち偶然から必然への方法論を構築する絶好の機会を迎えています。
従いまして、本学術大会のテーマは「和漢医薬学研究の新地平を拓く Beyond the WAKAN-YAKU」とさせて頂き、新規の方法論、さらに新規の作用機序、治療効果や臨床応用の知見について、ご参加の皆様による熱い討議を通じて、和漢医薬学研究の未来を創っていくことができればと考えております。
毎年9月1日から3日(前夜祭は8月20日から30日まで)にかけて、富山県を代表する祭である「おわら風の盆」が富山県富山市八尾地区で行われます。越中おわら節の旋律にのって踊り手たちが洗練された踊りを披露し、哀調のある音色を奏でる胡弓の調べが聴く人を魅了いたします。是非、本学術大会と合わせまして、学術と文化をご堪能いただけましたらと思っております。ただ、「おわら風の盆」が行なわれる3日間は、八尾はもちろんのこと、富山駅周辺もたいへんな賑わいをみせますので、宿泊等の手配はお早目にお願いいたします。
多くの皆様にお目にかかれますことを大変楽しみにいたしております。
第36回 和漢医薬学会学術大会 大会長 門脇真
富山大学 和漢医薬学総合研究所 教授