本研究会の趣旨


 タウリンは魚介類に豊富に含まれるアミノ酸の1種であり、1827年に牛の胆汁中から発見されて以来、今日に至るまで数多くの研究が行われてきました。これまでの研究結果から、タウリンは浸透圧調節、細胞膜安定化、抗酸化、抗炎症作用などを介して、細胞や体の恒常性維持に寄与しており、様々な疾患の予防にも有効あることが判ってきました。最近の分子生物学的な手法を用いた研究から、体内のタウリン量が減少したマウスでは、細胞や臓器の機能が低下し、老化が促進され、寿命も短くなることが明らかになっています。ヒトにおいてもタウリンの摂取の有用性が報告されており、世界的な疫学調査から、食事からのタウリン摂取の多い地域では肥満や高血圧などの生活習慣病が少なく、循環器疾患による死亡率も低いことが示されています。超高齢化社会を迎えた日本において、高齢者の健康維持や健康長寿をめざしたタウリンの活用は、今後の大きな研究の柱の1つと考えられます。日本においてタウリンは、医療用医薬品や栄養ドリンクの成分として古くから使用されていますが、近年、魚の養殖におけるタウリンの重要性も解明されてきました。日本は世界の中でもタウリン研究が最も盛んな国であり、医学、薬学、体力科学、農学、水産学、栄養学、理学、工学などの領域で、様々な基礎および応用研究が精力的に進められております。
 タウリンに関する国際的な学会として国際タウリンミーティング(International Taurine Meeting)があり、1975年米国アリゾナ州ツーソンにて第1回のミーティングが開かれて以来、2~3年ごとにこれまでに合計19回のミーティングが世界各地で開催されてきました。日本でも東京(1982年)、大阪(1987年、1995年)および下田(2007年)において本ミーティングが開催されました。日本国内では、1978年から1988年まで含硫アミノ酸研究会が組織され、タウリン研究の成果の発表と研究者の情報交換が行われてきましたが、現在では、国際タウリンミーティングがタウリン研究者の集う国内外で唯一の会議となっております。
 このような状況の中で今回、国内外のタウリン研究者が集まり、情報交換や議論を重ねる場を提供する目的で、国際タウリン研究会(Society for Taurine Research)を設立いたしました。今後、定期的に研究会を開催し、国際タウリンミーティングとも連動して成果の発表や情報交換を行い、タウリン研究の更なる活性化を進めてまいります。
 皆様におかれましては、国際タウリン研究会の設立にご賛同いただき、ご理解、ご指導ならびにご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。