第59回日本定位・機能神経外科学会[The 59th Annual Meeting of the Japan Society for Stereotactic and Functional Neurosurgery]

ご挨拶

第59回日本定位・機能神経外科学会

会長 杉山 憲嗣

(浜松医科大学 脳神経外科)

謹啓

 このたび、伝統ある日本定位・機能神経外科学会の第59回学術集会を浜松の地で開催させていただく事になりました。今回、第22回日本脳神経減圧術学会(森田明夫会長)と第43回日本てんかん外科学会(山本貴道会長)との同時開催となりますが、日本てんかん外科学会の山本貴道先生も浜松医科大学の出身で、これらの学会を浜松の地で開催させていただく事を浜松医科大学脳神経外科同門一同大変に光栄に存じております。日本定位・機能神経外科学会は1963年に第1回が開催され、脳神経外科関連の学会では総会についで歴史のある会です。浜松医科大学がお世話させていただきますのは、第34回(1995年)植村研一名誉教授、第47回(2008年)難波宏樹教授に続き3回目となります。まだ比較的記憶に新しい2008年の会から既に一昔の十年を超えて11年を経過した事に驚きを感じております。この間に様々な医療技術の革新が出現いたしましたが、一方で、孤島に取り残されたかのごとく、変わらなかった分野も存在いたします。浜松には「やらまいか」という言葉が存在します。標準語に直せば、「やろうじゃないか」との意です。浜松は、かつて徳川家康が、若き日々をすごした地でありますが、近年まで多くの自動車メーカー、バイクメーカー、楽器メーカーが芽を出し、世界へ展開していった都市でもあり、「やらまいか」の精神は現在も色濃く残っております。今回のテーマを「未来への収束と拡散」とさせていただきましたが、「収束(convergence)」と「拡散(divergence)」という神経生理用語を使用させていただきましたのには私なりの思いが存在します。今まで、日本の機能神経外科の先達の方々は、アジアの島国に有りながら、世界をリードする機能的脳外科のブレークスルーをいくつも作り出して参りました。昨今では、特定臨床研究法などの制定があり、我々日本の機能的脳神経外科医は少し以前よりも保守的になっていはしないか、との懸念が存在いたします。このような状況を打破し、再度、世界の第一線に躍り出るために必要な事は、もう一度原点に立ち返り、神経難病に対して基礎研究から臨床までの知識と技術を総動員すること、そのときの知見をさらに新たな難病に注入する事ではないかと考え、今回のテーマを「未来への収束と拡散」とさせていただきました。

 もはや我々の技術と知識の対象となる病態は、不随意運動と疼痛疾患に留まりません。新規分野への進出に伴い新たな問題も存在し、それを皆様と認識し、さらに議論を深めたいと思います。医療技術の革新によって新たにもたらされたものや、これからもたらされるであろうものをしっかりと認識し、それを臨床領域に「拡散」せねばなりません。そして何よりも好奇心あふれ、ファイティングスピリットを持って、新しいことに果敢に挑戦し続けていければと考えております。

 皆様方のご参加を心よりお待ちしております。

「やらまいか」

謹白