<2015年10月掲載>
行政官から見た専門職大学院留学の魅力
京都大学大学院社会健康医学系専攻専門職課程1年制コース修了(平成25年度修了)
佐藤 礼子 さん
専門職大学院への道に一歩を踏み出したのは、霞が関で働き始めて7年目、初めて研究事業を担当した頃です。行政官として次第に責任ある役割を担うようになる中で、基礎知識が不十分なまま綱渡りし続ける不安が大きくなり、研究を巡る基本的知識を身につけるとともに、公衆衛生を体系的に学び直したいと考えるようになっていました。留学先に海外を選ぶ行政官が多い中、敢えて国内留学を選択したのは、日本の大学院だからこそ日本の問題に向き合えるのではないかという思いがあったからです。
大学院での1年間は、いわば、日本のアカデミアの世界での“ホームステイ”した日々でした。先生方の指導方法や研究室の運営方法が多様であることなど、大学では当然のことが一つ一つ新鮮に感じられました。また、様々な講義を通じて、適切な研究計画を立案する重要性やその難しさを知り、研究を巡る実務に直結する学びが数多くありました。
自身の課題研究のテーマは、入学前から決めていました。かつて新設に関わったチーム医療に関する保険点数が、医療現場でどう活用されておりどのような問題を生じているのかといったことを自分自身で調べてみたかったのです。医療経済学教室の今中教授を始めとする先生方や先輩方にご指導いただきつつ、アンケート調査やデータ分析等を自ら行いました。初心者ながら、実務経験者としての問題意識と問題解決志向があるからこそ出来る研究アプローチもあると考えて精一杯取り組み、卒業後は国内誌に論文を投稿しました。
共通の関心分野を持つ院生や先生方との出会いは大学院の大きな魅力です。私の場合は、彼らにとって行政官がいかに非日常的で理解し難い存在であるかを実感するとともに、自分の発想が行政側の論理で固まりかけていたことを自覚しました。また、他の院生から相談を受け、その研究で導き出される可能性のある社会的意義を行政官の視点で提案する機会もありました。
アカデミアと行政が協働しなければ解決できない公衆衛生上の課題は非常に多く、人材交流はその基盤です。今後、専門職大学院が、現実の問題解決にプレイヤーとして関わろうとする研究者の卵と、研究者の抱える困難を理解しようとする行政官の卵とが“化学反応”を起こす場として機能していくことを期待します。そして、医療に問題意識を持つ方々には、自分自身の選択肢として専門職大学院を積極的に考えていただければと思います。
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