さて、レベミルとは?

さて、トレシーバとは?
可溶性インスリン混合製剤の必要性

2012-11-9

さすがに、ノボは自社の製品が出来が悪いと自覚したのか、5年経ち皮下で6量体を形成する改変インスリン製剤デグルデグ(degludec トレシーバ)を開発し、3極の中でまず日本で、続いて欧州で認可を得た。米国でも8票対4票と否定する向きもあったが、承認が得られる予定である。
低血糖が少なく心血管事故の面で安全性が高いとしても、血糖降下作用が不十分ならば、役に立たず、ACCORDの反省にたつしにても、やはりレベミルとの違いに困ることになる。
日本では評価が、血糖降下剤として非劣勢であればいいが、米国はハードエンドポイントとして、糖尿病治療の最終目標である合併症の低下を求める傾向がある。
一方で、利点もある。70Mixや50Mixとゆっくり効く成分が多くなるほど、従来の混合製剤ではジャリジャリした結晶成分を均一にするのに、室温に馴染ませよく混和する必要がある。30Mixでは誤差が少ないにしても濃くなるほど大変だと、川崎らが糖尿病誌2012年10月号で指摘している。
トレシーバの混合製剤のRyzodegはこの点、結晶を混和せずにすむので、商品としての有利な形質を持つ。


さて、レベミルとは?

2007-10-25

インスリンが作用しない様にするにはなにかで邪魔すれば良い。
インスリンを打つ打たずに関わらず、自分で自己抗体を作ってしまう患者さんもいる。そのような患者さんでは高インスリン血症にも関わらず血糖値が高かったり100単位を超える高用量を要する例もある。
レベミル(detemir)はB鎖30位のトレオニン残基が欠損し、B鎖29位のリジン残基のεアミノ基をミリストイル化しアルブミンと結合し易くしたアナログインスリンである。アルブミンと結合する分フリーの詰まり仕事をしないインスリンを増やし、ちょっとずつアルブミンから離れたインスリンが効き目を呈すれば基礎分泌に相当する、緩徐なインスリン作用が、期待される、として開発された。しかし、600pmol=1単位とした通常のインスリンの濃度と同じ規格のdetemirは作用がたらず、1200も駄目で4倍の濃さの物を投入して、レベミルとして認可を得た[ニュースリリース]。

2型糖尿病の本態が、インスリン抵抗性にあるか分泌不足にあるかは、派閥政治にも似た論争のネタにあたるが、両方あるのが普通である。初期分泌が不足するので血糖が上がってしまう、それを1時間2時間してからインスリンが後だしジャンケンで出てきてももう高血糖というのがオチというのがごく普通の生活習慣病としてのT2Dである。

SU薬やBG薬を十分量使っても血糖コントロールが付かない症例はインスリン不足があろうとして、インスリンに切り替えるか、併用する。では、併用するとして補うのは基礎分泌であろうか?追加分泌であろうか?1型では追加も基礎も枯渇しておりSU薬は使わないのでこの論争は生じないが、2型では基礎分泌はある程度ある。SU薬でその下駄も履かす事が出来る。

detemirを追加した4T試験では二相性インスリンないし速効型インスリンに較べて、レベミル使用例では血糖降下作用は不十分であった[内科開業医お勉強日記2007-10-24・NEJMVolume 357:1716-1730]。
後だしジャンケンでは太らなかったとか低血糖が少なかったとあるが、太らないというのは血糖が下がらない=作用不足のトレードオフである。合併症予防のためには十分な血糖降下作用がないと困る。

医学的にみれば、追加分泌が不十分なら、追加分泌を補わないと、高血糖は是正出来ないということが、歴然としたという、当然の事を確認した形に終わった。

政治的には高齢で認知機能に難のある2型糖尿病の老人の治療。長期の合併症が治療目標ではなく、脱水・高血糖昏睡やケトーシスの防止がゴールで、400mg/dlではなく250mg/dlを目標とする様な場合。ここではdetemirが使い勝手が良いというのは否定しない。
ホームや老健・訪問看護では日勤帯にしか看護師がおらず、昼一回なら打てるという場合にレベミルを用いる。
そんなパターンではレベミルは歓迎される。

でも、面倒とかインスリンを使っているのがバレルのが嫌とかいう心理的な理由でレベミルに逃避しても、合併症の十分な予防にはならないというのがこの試験が示唆する結果であろうと思われる。二相性でなくても中間型にも幾らかのピークはある。そのピークの分レベミルより追加分泌が補われ、レベミルより良い血糖が保たれるなら、N(中間型)の替わりに採用すると望ましくないコントロールが増えるかも知れない。


経口血糖降下剤とレベミルの併用-審査報告書[pdf]からの抜粋-

国内でのNN304-1477試験(経口血糖降下剤との併用)において本薬投与群-NPH投与群の信頼区間の差0.07%[-0.07,0.21]の上限が事前に設定した非劣性限界値0.4 %を下回ったことから、本薬群のNPH群に対する非劣性が検証された。
投与後32週のインスリン投与量(単位/kg、平均値±標準偏差)は、本薬群0.1649±0.0941、NPH群0.1387±0.0853であり、群間差と95 %信頼区間は、0.0262[0.0077, 0.0447]であり、本薬群で統計学的に有意に高かった。

機構は、経口血糖降下剤との併用においてNPH群より本薬群の投与量 が有意に増加していることについて説明するよう求めた。
海外で行われたNN304-1530試験では、試験終了時の平均HbA1Cは両群ともに7 %以下まで低下し(本薬 群6.58 %、NPH群6.46 %)、試験終了時の平均投与量は、本薬群65.6単位/日、NPH群45.0単 位/日と、NPH投与群に比し本薬群で高かった。
海外試験では本薬とNPHの投与量に差が生じており、その原因は明確になっていない。
国内で行われたNN304-1477試験における(中央値: 本薬群8.0単位/日、NPH群7.0 単位/日)、本薬とNPHの投与量の違いは、臨床的にはほとんど意味 のない差であると考えるが、国内外で本薬の投与量が6倍程度 異なっていたことについて、申請者はBMIやインスリン抵抗性の違いが考えられると説明して いることから、国内においてもBMIが高値又はインスリン抵抗性が強い患者では、本薬はNPH より高用量を要する可能性も否定できないと考える。


[吸入インスリン]


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