米国臨床内分泌医協会(AACE)の糖尿病前症(pre diabetes 境界型糖尿病相当)に関するステートメント

2008-08-12

2008年の7月23日に発表[pdf]された内容は、十分な専門家集団のチームがあれば糖尿病前症が糖尿病に進展したり心事故を起こさないようにする生活習慣への介入方法は編み出されている。しかし、そのコストは高く「チーム医療を支えるだけの、人的予算的裏付けがないので」提供できていないとし、メトフォルミンは1/3の予算で足りることも直視せざるを得ないとしています。
FDAが承認していないこともあり、αGIとBG剤については十分な安全性と実績があることから、慎重に適応を考慮すべきという段階で止めてあります。ただ、TZDは心不全の危険性が、インクレチンに関する薬物[GLP-1 receptor agonists, DPP4 inhibitors, or meglitinides]は知見の集積がなされていないことから勧められないとしています。
血糖コントロール以外の危険因子の管理のために、全例へのアスピリンの投与を勧め、降圧目標<130/80mmHgを満たさない例への第一選択薬としてのACEI/ARB第二選択薬としてのカルシウム拮抗薬の投与を促しています。ただし、β遮断薬や利尿剤は糖尿病発症リスクから降圧目標が達成されないときにやむを得ないときに用いる事と記載されています。
HMG-CoA還元酵素阻害薬の使用はLDLコレステロール100 mg/dLを切る事を目標に考慮すべきとしています。


平成18年度の時点で世界のあちこちが、糖尿病発症予防に投薬する事に関してどのような、スタンスでいたかのメモランダム。

国際糖尿病連盟(IDFたしかに薬剤による糖尿病発症遅延は認められており、ハードエンドポイントも確認されているが、長期的な利益については未だ研究中である。生活習慣の改善は糖尿病だけでなく、脳血管障害の予防や癌などにも好影響をもたらすので優先される。

http://www.idf.org/webdata/docs/T2D_practical_tt.pdf

(p48,49 ) However, delaying the onset of diabetes in such high-risk patients will provide some benefit. It may, therefore, be prudent to treat people with IGT with lifestyle advice, at least, or with glucose-lowering agents of proven long-term safety while more data are accumulated. However, until studies are completed investigating the impact of these, and other, agents on hard clinical end-points in people with IGT, their role in IGT will remain uncertain.

 

日本 身体活動と食事を中心とする地域保健活動に注力、薬物介入に対する言及無し3次予防に関するまとめはこちら

健康日本21 各論7.糖尿病

http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/about/kakuron/index.html

 

豪州身体活動と食事のみで、薬物介入に対する言及無し

http://www.diabetesaustralia.com.au/_lib/doc_pdf/nebg/mellitus/part2-final.pdf

 

NZ身体活動と食事のみで、薬物介入に対する言及無し。DMの早期発見に注力

http://www.diabetes.org.nz/resources/files/PWCReport/chap10.pdf

http://www.diabetes.org.nz/resources/Pre-diabetesFacts2006.pdf

The good news is we know that lifestyle changes will work and healthy eating and physical activity are twice as effective as medication and not nearly as costly.

 

フィンランド 肥満を伴う場合のOrlistatorlistat(脂肪消化抑制剤)を例外として、薬物介入に対する言及無し、身体活動と食事を中心とする地域保健活動に注力

http://www.diabetes.fi/english/prevention/programme/index.html

 

フランス ガイドラインにエビデンスレベルの記載はあり好意的に見えるが、応用の可否について明言しているか、フランス語なので詳細は判らず。

PRINCIPES DE DEPISTAGE DU DIABETE DE TYPE 2 FEVRIER 2003 Service évaluation des technologies Service évaluation économique p67 IV.2 Efficacité de la prévention primaire du diabète de type 2

http://www.has-sante.fr/anaes/publications.nsf/(ID)/CB4A2FB79CC9F35AC1256D28004D27E4/$file/diabete_rap_2003.pdf

Stratégie de prise en charge du patient diabétique de type 2 à l'exclusion de la prise en charge des complications

HbA1c6.5%までは薬物療法をせず、生活習慣介入に努める。

 

ドイツ 薬物療法については消極的、サプリメントは否定

http://www.deutsche-diabetes-gesellschaft.de/redaktion/mitteilungen/leitlinien/EBL_Ernaehrung.pdf

 

カナダのガイドラインは、薬物の使用を否定していません

http://www.diabetes.ca/cpg2003/chapters.aspx

Screening and Prevention

 -> Type 2 Diabetes -> Preventing type 2 diabetes

5. In individuals with IGT, pharmacologic therapy with metformin (biguanide) [Grade A, Level 1A (26)] or acarbose (alpha-glucosidase inhibitor) [Grade A, Level 1A (28)] should be considered to reduce the risk of type 2 diabetes.

 

一番説明がもとめられるのは良い成績をだした試験(DPP, DPS)では、ほぼ個別指導に近いことを長期間施行しており生活習慣介入の方が費用対便益が悪い、実施困難性を乗り越えるには、薬物しかないであろうという。

 実際、70時間残業をしている職場では、運動も食事も介入の余地はありません。

 

 英国のガイドラインNICEはまだ境界型糖尿病には至っていません。

 

 米国FDAの他、ガイドライン集がありますが、これは図書館のようなもので各論並記です。国としての方針は示されない性格のものです。

http://www.ahrq.gov/clinic/tp/impglutp.htm

 

シンガポールのガイドラインは、薬物の使用にまだ十分な根拠が無いとしてます

Drug therapy should not be routinely used to prevent diabetes until more information, particularly in regard to cost-effectiveness, is available. [Diabetes Mellitus guideline from MOH 2006]


[RSS]