平塚中郡薬剤師会は東海大の大磯病院と協同して副作用の取りまとめをしています。
1年間で300件余りの副作用が見いだされ、大磯病院の薬局とも連携して、同じ副作用が出ない仕組みを構築しています。
診療所でも国の独立行政法人に報告をしています。2年か3年に1件くらいはあります。中止で軽快する、非重篤ですが、繰り返さないようにしています。
副作用か迷ったら、医師か薬剤師に相談しましょう。
薬以外に、化粧品の副作用もPMDAが窓口になって情報を収集しています。
食品は国の機関では食品安全委員会が窓口の一つです。地方自治体での相談窓口は、保健所(食中毒扱い・異物混入扱い)・消費生活センターになります。下痢嘔吐だけが食中毒ではありません。
サプリに甲状腺末や血糖降下薬が含まれることもあり、その場合は、県の機関の衛生研究所が調査します。
薬の名前と量が判らないと、相談になりません。スマホで写真を撮るなど記録しておきましょう。
困った例では、ポリファーマシーとドクターショッピングがあります。
幾つもの医療機関を利用し、医療機関の近くの薬局で別々に薬を貰い、同じ効き目の薬が重複することがあります。量が倍になると本来起きない副作用が出ることもしばしばです。湿布と飲み薬を重ね合わせたり、アトピー性皮膚炎の飲み薬と風邪薬が併用されたり、そうなると量が二倍になります。
薬の副作用がある場合は、まず中止が基本です。
しかし、副作用と思わずに、次々別のお医者さんに掛かり、症状を打ち消す薬が、重ね合わされることがあります。
鼻水が出るので、抗ヒスタミン剤を貰います。抗ヒスタミン剤は、鼻水のほかに唾も減らすので口が乾きます。夜飲む水の量が増えます。一方で、排尿の自律神経と鼻水の自律神経は逆向きに働きます。鼻水が出ない代わりに、尿が出難くなる尿閉を起こします。水を飲んでおしっこが近くなって夜起きるけど出無いので、困ります。泌尿器科の先生と内科の先生に同じ相談をします。この時、鼻水の話が抜け落ちて、鼻水の薬も抜け落ちて、症状の緩和の薬が出て、しかもダブルで出て、さらに別の薬局だと、監査もすり抜け…、重篤な副作用を招くこともあります。
尿閉を改善する薬はコリンエステラーゼ阻害剤などです。副交感神経を活発にします。唾液や鼻水の分泌を促します。あまり分泌が多くなると窒息します。
最初は何だったでしょう?鼻水でしたね。
一番有名な、コリンエステラーゼ阻害剤は「サリン」です。コリン作動性クリーゼはサリン中毒と同じ経過で死亡に至ることがあります。
ポリピルとドクターショッピングは大変困ります。
漢方は複数の生薬を組み合わせます。よく使われる生薬は、炎症を抑える甘草・下剤の大黄・咳止めの麻黄です。
この3つが含まれる痩せ薬があります。防風通聖散です、ナイシトールとか別の名前で売っています。医師の処方なしで薬局で手に入ります。
これに風邪薬の漢方を上乗せすると、甘草や麻黄が倍になります。
便秘で下剤を貰うと大黄が倍になって下痢します。
甘草は文字通り甘味料としても使います。北欧ではリコリスという飴とグミの境目のようなお菓子として流通しています。日本でも咳止め飴で売られています。ここでも、のど飴と風邪の漢方の倍々処方が成立します。
カフェインと麻黄は基本骨格・同じような亀の甲の化学物質が有効成分です。分解が競合すると副作用が出やすくなります。市販の西洋薬の風邪薬には鼻水止めの眠気を紛らわすためにカフェインが入っています。ここでも、血中濃度が上がりすぎる可能性があります。
エナジードリンクも同様です。
医者や歯医者に掛かっても、薬局が一つであれば、重複に注意して貰えます。市販薬や食品に類するものを買うときにも、重複が無いか相談できます。
レジンなどの粘度調節のため、石綿を過去使用していた事例がありました。
接着剤に混ぜてあったり、粘着テープに加工されていれば、飛散は考えにくいので、健康影響は限定的ですが、自分の所で調合している場合は、粉状の石綿を吸引していたかもしれません。
石綿の代替副資材についても鉱物性粉じんや場合によってはナノマテリアルに当たります。現時点で、健康影響がはっきりしない、軽微と見做されている場合、粉じん則などの適応を疎かにしがちです。
大量または長期間にわたって扱う場合は、鉱物性粉じんとしての大雑把なくくりで指定されますので、作業管理・作業環境測定・健康診断などを欠かさないようにしましょう。
ダレ止めの例には、アスベスト・セピオライト(海泡石)・超微粉シリカ・タルク(滑石)などが挙げられます。
微細なシリカの粉は、じん肺を引き起こし易いです。ダレ止めは、微細な程・繊維状な程、効果が出ます。
PM10, PM2.5という言葉がありますが、5μm未満では肺胞まで吸い込まれます。
肺胞では免疫を司るマクロファージが貪食して処理しようとしますが、無機質は分解できず、力尽きて炎症だけが、肺を痛めてしまいます。
肺胞構造が壊れ酸素を取り込めなくなり、鉱物性粉じんを核として結節が形成されます。これが、じん肺の形成です。
ナノ粒子・ナノマテリアルの研究についてのパンフレットには、詳しい肺障害の機序が書いてありますので参考にしてください。
平成21年3月31日に出された、【基発第0331013号】ナノマテリアルに対するばく露防止等のための予防的対応についての記載には
(3) 作業環境管理 で「 ア 製造・取扱装置の密閉化等 イ 局所排気装置等の設置」を求めています。粉体の調合は安全キャビネットのなかで行いましょう。
(5) 健康管理 では、「ナノマテリアル関連作業に従事する労働者については、労働安全衛生法又はじん肺法に基づいて行われた健康診断等により当該労働者の健康状況の把握に努めること。」と、されています。粉じん則に基づいて特殊健康診断を実施しましょう。
平成29年10月24日にだされた、【基安発1024第1号】. 粉状物質の有害性情報の伝達による健康障害防止のための取組について、では
有害性の低いとされる物質についても、大量・長期曝露されれば肺障害の原因となりうるので注意喚起を行っています。これはアクリル酸の粉末の健康影響を受けて出されました。アクリル酸については後述します。
人工物であっても、タルクや非晶質シリカについては、鉱物性粉じんとして、粉じん則にしたがって、曝露防止措置・作業環境測定・健康診断が必要であるので、各事業者において措置状況の確認が必要であると注意喚起しています。
石綿から1995年以降切り替えた代替物質の火炎加水分解法非晶質シリカのナノマテリアル情報提供シートで
製造元は工程でもじん肺は起こっていないし、結晶型のシリカではないので、呼吸毒性は無いと主張しています。
それでも鉱物性粉じんには変わりはなく、計量や配合は安全キャビネットのなかで行うなど、粉じんに配慮した作業管理は必要です。
タルクは古典的な物質ですが、平成30年に、健康影響に対する賠償が命じられる判決が出ました。
平成30(ネ)628 大阪高等裁判所 第3民事部
オーツタイヤ株式会社での「タルク」「混合機のブレーキライニングのアスベスト」の事案です。
工場では、バンバリーミキサーのあとシートゴムの防着剤としてタルク粉が使われ乾燥した粉が飛散していました。
また、ホワイトサイドウォールの白を出すためにタルク粉を調合していました。
タルク粉の珪肺とタルク原料である滑石に不純物として含まれるアスベストの石綿関連肺疾患の合併を争い賠償が認められた判例になります。
タルクについては、ベビーパウダーでも、北米で広く民事賠償が命じられるクラスアクションがありました。
1980年代に調査した頃には国産のベビーパウダーにもアスベストが検出されていました。今のベビーパウダーは、鉱物性のものからステアリン酸C18H36O2に変更されて居ますので、石綿は含まれません。
平成18年を最後に工業用途のタルクには0.1重量%アスベストは確認されていません。材料の滑石の産地を国内から海外に切り替え、検査を加えて居ます。しかし、天然物なので全くのゼロは困難です。
直近では化粧品を製造する過程で増粘剤につかう架橋型アクリル酸系水溶性高分子化合物の「じん肺」が認定されています。
酸化チタンなど肌から直接吸収されるのではないかなどの疑義があるので、日本化粧品工業会でナノマテリアルについての調査研究を続け、報告しています。
先程の架橋型アクリル酸系水溶性高分子化合物については、消費者のもとに届くときは湿性なので吸入する可能性は無いと考えられています。
建築用シーリング材では、油性コーキング材と1成分系ブチルゴム系シーリング材には過去のアスベスト使用が有ります。 アスファルト系の防水資材とポリウレタン断熱材の面材にアスベストを過去に使用していました。 自社の製品に使用していなくても、現場でのサービス業務(施工・解体の立ち合い)や他社製品の解析などでは曝露の可能性もあります。 湿性であれば吸入に伴う、じん肺の懸念は無いですが、ハツリ作業などに立ち会う時は、十分な保護具を用意した方が良いでしょう。
石綿も、じん肺法・粉じん則でじん肺として扱われます。
石綿肺は下葉を中心に細気管支炎・間質性肺炎の像になります。また胸膜プラークの併存が石綿肺の診断を補強します。
じん肺、特に珪肺は粒状結節影で上葉を中心とする。進行した珪肺では、気胸を起こしたり空洞を形成します。
同じじん肺でも、シリカの少ない鉄などの溶接肺では、作業の中止で軽快する場合が多いです。鉄は生体利用できるので少しづつでも減ります。これが裏目に出るのは、令和3年から施行される溶接ヒュームのマンガン中毒に対する特化則の規制です。肺だけではなく神経筋骨格の障害が出ます。また、以前からカドニウムの中毒も指摘されています。亜鉛は蛋白と結合しアレルギー反応を起こし金属熱という急性炎症を起こします。
石綿肺のじん肺の区分決定があった上で、あるいは胸膜プラークの存在が確認されたうえで、中皮腫や原発性肺がんがあると、石綿関連疾患として労災で救済されます。
ごく稀に原発性肺がんのみで認定されることもありますが、病理検体を取り、中の石綿小体の本数を確認することで認定されます。肺がんの場合、進行してから見つかることも多く、生前に認定のためだけに手術で検体を得るのは大変負担ですし、病理解剖が出来ない施設や自宅で亡くなると、死後の検証も難しくなります。