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研究室代表からのメッセージ


CEO

我々の研究室のホームページをご覧になっていただき、ありがとうございます。私は大学医学部卒業後、5年間整形外科医として骨折などの外傷や腰痛・膝関節痛などの疾患、そして悪性腫瘍の患者の治療にあたってきました。どんなに複雑な骨折であっても、きちんと整復してあげれば自然に骨が再生しもとどおりに治る骨折と比べ、軟骨組織などの変性によって生じる変形性関節症は切除して人工関節と入れ替える以外に治療法はありません。また骨肉腫などの悪性腫瘍に対しては有効な治療薬の開発が進んでおらず、治療成績は非常に厳しい状況でした。骨軟部腫瘍を専門としていた私が、研究によって何か新しい治療法開発の可能性が開けないかと大学院に入ったのが1999年になります。中村祐輔教授の研究室に配属となり、以来アメリカ留学期間の1年半を除いて東京大学医科学研究所で研究を行なっています。

我々の研究室では、癌を中心とした様々な病気の発症メカニズムの解明を目指しています。人口の高齢化に伴い、2人に1人が生涯の内に癌に罹患し、3人に1人は癌で亡くなるという時代になり、癌という病気は決して特殊な病気ではありません。癌を治療するためには、まずその原因を知る必要がありますが、大腸癌の多段階発癌モデルでも知られている様に、癌は遺伝子(DNA)の異常が原因で生じる病気です。我々は特にDNAの変化がどのように癌などの病気の発症を引き起こすかについて研究を行なっています。
主な研究テーマの一つが、がん抑制遺伝子p53の解析です。p53は転写因子として機能し、様々な下流遺伝子の発現を誘導することによって癌化を抑制します。近年次世代シークエンサーの出現により高速かつ安価で癌組織のDNA配列が調べられるようになり、近年多くのがん抑制遺伝子が見つかってきています。p53というと古いと感じる方もいるかもしれませんが、全ゲノムシークエンス解析の結果において、最も高頻度に変異が見られる遺伝子がp53であり、その重要性が再認識されています。p53の下流遺伝子は200以上あるとされており、その多くはまだ明らかになっておりません。我々はp53下流遺伝子を同定することで、p53を介した発癌抑制メカニズムの全貌の解明を目指しています。
また我々の研究室では、文部科学省リーディングプロジェクトの個別化医療実現化プロジェクトの運営を担当しています。このプロジェクトでは、47の疾患の患者由来のDNA、血清、及び病気に関連する情報を収集しております。これまでに20万人以上の患者の方にご協力いただいており、そのDNA配列、血清の比較検討から、病気の発症リスクや薬の治療効果の予測因子(バイオマーカー)が多数見つかってきました。このような研究成果によって、病気の予防、早期発見、また個人の体質にあった適切な医療の提供(個別化医療)の実現を目指しています。
学生時代部活の方に集中して殆ど授業に出席していなかった上、実際に研究を始めたのは29歳と遅いスタートでしたが、幸運にもその都度興味深い研究テーマや上司、同僚に恵まれ、これまで研究を続けることが出来ました。私自身が基礎知識がほとんどないまま研究の世界に足を踏み入れたので、学部生時代の研究分野が違ったり、病気の事を知らないという方でも大丈夫です。体力と根性と運(?)に自信がある方、我々の研究に興味のある方、実際の医療に役立つような研究をしたいが何をやればいいか迷っている方、是非一緒に研究をしましょう。