危ないお医者様の見分け方
厚労省の限界と私たち
名医を見つけるのは不可能だ.なぜならばいつでもどこでも誰にとっても名医である医者など存在しないからだ.でも,危ない医者なら簡単に見分けられる
アビガンの審査、治験成績なしでも可 厚労省見解 (日本経済新聞 2020/5/12 )

●はじめに
●添付文書一つ読めないお医者様達の前科

その懲りない面々をマスコミが焚きつけた
消えたEBMと復活した三「た」論法
アビガンはイレッサよりも,そしてサリドマイドよりも,はるかに危険
厚労省の限界と私たち

はじめに
はじめにお断りしておくが,以下の説明はいつもながら公開情報・資料を基に私が一人で勝手に考えたことであって,誰かから内情を聞いたり,非公開の文書を掴んだりしたことは一切ないし,その必要もない.たとえ,承認審査に直接携わったことがなくても,「有効性と安全性の両方が科学的に担保された医薬品だけが承認される」ことを知っていれば,誰でもわかることである.
そのことがわかれば,「治験成績なしでも可」とするアビガンの承認が極めて異常なことがわかる.その異常さがわかれば,そこに特別な理由を見いだせる.それがリテラシーである.リテラシーを持っている者にしか見いだせないことは,決して報道されない.なぜならばジャーナリストを称する者の多くはリテラシーを持ち合わせていないからだ.リテラシーとは何かを理解していないから無理からぬことなのだが.

●添付文書一つ読めないお医者様達の前科
厚労省がアビガン承認を急ぐのは,決して政治的圧力に屈したわけではない.添付文書一つ読めないくせに専門家面するお医者様達の尻ぬぐいのためである.古くはスモン,近年ではイレッサで,「薬害」を創り出した張本人は,添付文書一つ読めないくせに専門家面(づら)するお医者様達だった.ディオバン「事件」では,効能効果には「高血圧症」とあるだけなのに,心不全や腎機能障害の予防になるとのseeding trialで奨学寄付金をたんまり稼いだだけでは飽き足らず,製薬企業の広告塔にもなって更に稼いだのも添付文書一つ読めないくせに専門家面(づら)するお医者様達だった稼げなかった悔しさを「不売運動」という形で企業に八つ当たりしたのも,添付文書一つ読めないくせに専門家面(づら)するお医者様達だったアビガン事件の構図
彼らはまたゾフルーザも乱用した.
添付文書を読みさえすれば,優越性が示されのはプラセボに対してであって,決してタミフルに対してではないことはすぐわかるのにタミフルゾロの3.5倍の値段の「期待の新薬」を競って購入した.彼らがゾフルーザに飛びつかなくなったのも,自らのリテラシーの欠如に気づいたからではない.耐性ウイルスのことを心配したからであって,タミフルに非劣性なだけなのに,タミフルゾロの3.5倍も値が張る品を掴まされていたことを悟ったからではない

●その懲りない面々をマスゴミが焚きつけた
この,何をしでかすかわからない連中を,またもやマスゴミが焚きつけた.イレッサの悲劇を生んだのが誰だったのかをすっかり忘れ,またもや彼らは彼ら自身が「バカなマスコミ」と呼ぶメディア各社が垂れ流すデマを信じ込んだ.「アビガンは新型コロナに有効な薬です.催奇形性の副作用に注意さえすれば,新型コロナに苦しむ患者さんを救えます」 そんなデマを彼らはすんなり受け入れた医薬品リテラシーの欠如はCOVID-19よりもはるかに強い感染力を持っている.「バカなマスコミ」が垂れ流すデマに感染したのは,COVID-19に感染していないお医者様達だった.日本医師会会長の横倉義武氏がその代表例である.彼は治験データが全くないにもかかわらず,「高齢・ハイリスク患者へのアビガン積極的使用」を「要望」している来たるべきアビガン訴訟の際にはマスコミによって真っ先に槍玉に挙げられるアビガンのデマ感染典型例である.そんなリスクを冒してまでも,何のエビデンスもないアビガン(↓)を応援してくれる日本医師会長.これほど心強い味方がどこにいるだろうか.

●消えたEBMと復活した三「た」論法
アビガンには何のエビデンスもないことは添付文書を読んだだけでわかるというか,効能効果を見ただけで解る.なぜなら,未だ地球上に出現したことのない疾患に対して「だけ」効能効果を持っている=地球上に存在している/存在したことのある疾患には効能効果を持っていないからだ.実際にアビガンの申請効能効果は季節性インフルエンザだった.ところが,承認効能効果は季節性インフルエンザではない.なぜならば,季節性インフルエンザに対する治験では,アビガンはタミフルに対する非劣性を証明できなかった.そしてプラセボに対する優越性を示すことにも失敗した.これは秘密でも何でもない.アビガンの審査報告書を読めば,そう書いてある(*).晴れの承認のために周到に準備したはずの治験でプラセボに完敗した薬がCOVID-19のような難敵に勝てるはずがない.
今,日本医師会長のように,アビガンを積極的に推奨しているお医者様達が「エビデンス」と称しているのは,「薬を使った、病気が治った、ゆえにその薬が効いた」の”三「た」論法”と呼ばれる昔懐かしい論法である.この論法は極めて汎用性に富むため,医薬品以外の手法の有効性を示す以外にもしばしば使われてきた.たとえば,雨乞いの太鼓は雨が降るまで叩き続ける.そうすれば「太鼓を叩いた,雨が降ってきた,だから太鼓には雨乞いの効果がある」との三「た」論法が成り立つというわけである.ただしこの三「た」論法は,コロナ祭りが始まる前の呼称であって,コロナ祭りが始まってからはどういうわけかEBMが(ついでに臨床研究法やヘルシンキ宣言も)忽然と姿を消し,それに代わって復活した三「た」論法は「エビデンス」と名を変えていた.現在行われている「観察研究」とやらも,この三「た」論法を何千回も繰り返した,大規模介入試験三「た」論法研究に他ならない.ヘルシンキ宣言違反に違反して被験者の人権を蔑ろにする「観察研究」から,エビデンスなんぞ得られるはずがない.組み入れが進むほど,医師と被験者の双方が傷ついていくだけだ.
*アビガンについて私に言い掛かりをつけてくる奴がたまにいるが,みんな「審査報告書」の何たるかも知らない素人である.おととい来やがれ.

アビガンはイレッサよりも,そしてサリドマイドよりも,はるかに危険
このままで行けばイレッサの二の舞,いや,現状を放置すればアビガンはイレッサよりも,そしてサリドマイドよりも,はるかに悲惨な「薬害」に発展しうる.なぜなら,下記に示すようにアビガンの危険性は決して催奇形性だけに留まらないからだ.
1.治験の欠如と適応外処方:イレッサの場合には治験はしっかりと行われていたし(=GCPに基づき対照群と比較検討したデータが系統的に収集されていた),市販後の使用も効能効果の範囲内だった.ところがアビガンの場合はどうだ.COVID-19に対する治験が行われていない上に適応外処方という,この上もない高い開発リスクを抱えている.
2.タミフルに負けプラセボにも勝てなかった「薬」:季節性インフルエンザに対する過去の開発でもタミフルに非劣性を証明できなかった(=負けた)上にプラセボにも勝てなかった.つまり有効性が一切認められていない=まともな薬として認められたことがない.
3.日本でだけ効く薬:国際共同治験がデフォルトの時代に,
FDAもEMAもアビガンを承認していない.一応海外で臨床試験をしているが,上記のように全て失敗している.そのためアビガンは今時珍しいローカルドラッグ,日本でだけ効く薬である.何かというと直ぐに対欧米追従主義が幅を利かす我が国にあって,アビガンだけが責めを免れている.普段からあれほど仲が悪い医師会とメディアがこの点に関しては方針がピタリと一致している.両者ともアビガンとレムデシビルの直接比較によって優劣を論ずることは一切やらない.まるで口裏を合わせたかのように.
4.ヘルシンキ宣言違反:レムデシビルがある現状では,COVID-19患者を対象にしたアビガンの研究であれ,処方であれ,それは明白なヘルシンキ宣言違反である.
5.限られた安全性情報:有効性の問題だけではない.アビガンの場合には治験データがない分,安全性情報がイレッサよりはるかに限られている.

6.予想外の副作用が新たに見いだされるリスク:だから今後も思わぬ副作用が明らかになる可能性はイレッサよりアビガンの方が遙かに高い.
7.アビガンを推奨する医師の見識の低さ:ところが「催奇形性に注意さえしていれば大丈夫」と信じるお医者様は,アビガンの副作用を「COVID-19の合併症」と簡単に片付ける.
8.副作用被害救済制度の適用外:さらにイレッサは効能効果に見合った処方だったのに対し,アビガンは完全な適応外処方である.だから医薬品副作用被害救済も受けられない.
9.身勝手な医師の処方の犠牲となる患者:つまり,添付文書一つ読めない医者の身勝手な処方で患者が被害を受け,さらにそれを救済する仕組みがない.
以上が理解できれば,何人たりともアビガンを積極的に推奨することなどできないことがわかるだろう.ましてやそれが(資格を持っている)医師であれば.

厚労省の限界と私たち
上に挙げたアビガンの問題点は誰の目にも明らかである.だが何せ相手は偉〜い偉〜い御医者様達の集まり,日本医師会である.アビガンのデマに感染したお医者様が跳梁跋扈する現状に対し,厚労省ができることは限られている.「最優先事項は患者さんが副作用被害救済制度を利用できない現状を解消することだ.そのために今すぐ厚労省ができることと言えば,適応外処方を効能効果と認め,不幸にも副作用が生じた患者さんが救済制度を利用できるようにすることだ.もちろん全例報告も含め,できる限りの承認条件をつけ乱用を防止する.こうして処方する医師の責任を明確にしておけば,無駄な裁判も避けられる.万が一賠償訴訟になったとしても,イレッサの時のように,乱用の張本人である肝心の処方医が消えてしまい,国だけが被告になるような事態は避けられる.それに国賠訴訟になったとしても,法務省から強力な助っ人を頼めることでもあるし」
このように厚労省のできることには自ずから限界がある.しかし,心配には及ばない.私たちは役所に頼らずとも,自分の命は自分で守ることができるのだから.
承認されたってへいちゃらさ.だってアビガンを勧めるような破廉恥なお医者様はお断りすればいいんだから
自分の命は自分で守ろう!!
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