ご挨拶


第26回日本精神保健・予防学会学術集会を2023年11月25日(土)・26日(日)に千葉大学医学部亥鼻キャンパス医学系総合研究棟にて開催させていただくこととなりました。近年精神保健や精神疾患の予防が極めて重要であることが本邦でも広く認識されてきており、本会を開催させていただくことを大変光栄なことと考えております。

今回のテーマは「適切な早期介入による難治化の予防」とさせていただきました。この日本精神保健・予防学会は統合失調症を始めとする精神障害の予防に関する学術的な交流を大きな目的としているものと思います。私たちは統合失調症の長期的な薬物療法の結果生じるドパミン過感受性精神病(DSP)の研究を行ってきました。その成果もあり、近年では治療抵抗性統合失調症は初期から抗精神病薬に反応しない群と初期には反応するものの後に反応しなくなる2つの群に分類され、後者の生物学的な背景にはDSPがあると考えられるようになってきました。そして私たちはDSPの予防法と治療法を提案してきております。

ところで、近年児童思春期を含む若年者の精神疾患が大きな問題になってきています。COVID-19流行下で若年者の自殺者数が増えたことが報告されています。また紹介制である大学病院には小児科のみならず他の精神科医療機関から気分障害や注意欠陥多動性障害、摂食障害など数多くの子供たちが紹介されてきます。発達段階ということから薬物療法が忌避され、または必ずしも適切でない薬剤が選択され、回復が遅れている症例を経験しています。また注意欠陥多動性障害の治療薬の選択肢が増えた一方で、過剰診断による適切な医療が遅れは二次障害を招き、児らの未来に負の影響をもたらすだけでなく、難治化にもつながる症例もいると考えられます。さらにここ10数年の薬理学的成果から双極性障害の抑うつ状態に対する治療が大きく変化しましたが、適切な診断治療が遅れ、社会的に大きな損失を受けていることも報告されていますが、やはり治療抵抗性に発展するという症例も日常的に経験します。適切な早期介入によって難治化を予防することが重要と考えます。

近年ではその他の様々な分野で精神保健の重要性が認識され、早期発見、早期介入が試みられていると思います。COVID-19の流行もひと段落し、対面での学会開催が可能となってきております。この第26回大会に是非皆様対面で参加いただき、精神保健及び予防について活発に話し合う機会としていただければ幸いです。皆様のご参加を期待しております。何卒宜しくお願い申し上げます。


千葉大学大学院医学研究院精神医学教授
千葉大学社会精神保健教育研究センター長

伊豫 雅臣

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