第44回日本小児神経学会会長挨拶
飯沼 一宇 (東北大学大学院医学系研究科小児病態学教授)
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この度は第44回日本小児神経学会の会長を仰せつかり大変光栄に存じており、また伝統ある学会を運営することの緊張感と重責を感じております。
この学会は2002年6月27日(木)から29日(土)まで、仙台国際センターで開催されます。これは1981年に仙台で第23回学会が開催されてから21年ぶりとなります。この21年間での医学の進歩は著しく、小児神経学にも大きな影響を及ぼしました。分子生物学の発展によって多くの神経疾患の原因遺伝子が同定されました。また、エレクトロニクスの発展によって新しい機器特に、神経画像解析の機器が開発され、診断技術そのものを飛躍的に発展させました。
このような科学の発展の裏腹とも言えるように、近年になり、不登校、心身症、ADHDなど、子どもの心に関する問題も増え、我が国における深刻な課題となってきています。特にADHDは神経学的疾患(neuronの異常に起因する疾患)に位置付けられるものであり、われわれ小児神経科医が正面から取り組むべきものです。
このようなことを念頭において、第44回小児神経学会のメインテーマを「子どもの脳とこころを科学する」としました。
今回の学会の企画として、特別講演は外国から3人、国内から2人、教育講演2人を招待しております。外国からは私の恩師であるBostonの Cesare Lombroso教授をお呼びし、新生児けいれんの障害作用に関する講演をいただきます。もう一人はHoustonの分子生物・神経科学者のGary Clark先生をお呼びし、神経細胞移動障害の分子生物学的基礎の講演をいただきます。特別講演には「脳損傷からみるヒトの記憶機能」を東北大学大学院の山鳥重教授に、「子どもたちの生と死 ―いのちの値段― 」を東京大学大学院の若井晋教授にお願いいたしました。教育講演は「小児神経疾患の遺伝カウンセリング」を信州大学の福嶋義光教授に、「脳神経発生の分子メカニズム」を東北大学大学院の大隅典子教授にお願いいたしました。いずれも興味あるお話が伺えるものと思います。
シンポジウムは「脳を育む―小児神経科医への提言―」と「障害児のQOL向上へ向けての医療的アプローチ」の2題を用意しています。「脳を育む」では文化勲章受賞者であられる伊藤正男先生に基調講演をお願いしています。ご期待下さい。
最終日の6月29日(土)の午後には市民公開講座として、「ADHD わかれば見える子の心、わかれば変わる自分と社会」を企画しました。この基調講演には、「ADHDのすべて」の著者でも有名なWorcester, MassachusettsのRussel Barkley教授にお願いしています。
多くの会員が東北の地仙台に集まり、小児神経学に関して熱く語り合う機会を提供したいと思っております。このことが、21世紀に向けて、我が国の小児神経学と小児神経医療の発展につながるだろうことを信じて、歓迎のご挨拶といたします。
事務局:東北大学医学部小児科
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