2021年12月吉日
日本肝移植学会は、1980年に発足した肝移植懇談会から発展し、1982年に肝移植研究会、1999年に日本肝移植研究会と名称を改め、そして2019年に日本肝移植学会へ移行致しました。肝移植医療を支える様々な領域の専門家が分野を越えて協働し、肝移植医療のさらなる充実と進歩のために努力を継続しております。
この度、理事長に再任の運びとなりましたので、ご挨拶申し上げます。
過去4年間を振り返りますと、2017年から2019年にかけ、脳死下臓器提供の着実な増加に伴い、年間脳死肝移植件数も100例に近づきつつありました。しかし、コロナ禍にあって、切迫した医療事情から、臓器提供の一時的な減少が余儀なくされました。一方で、医療者の行動制限を踏まえて、提供施設の近隣にある移植施設の協力を得て摘出手術を行う「互助制度」が導入され、移植医療の普及のため本来あるべき体制への転換が促進されました。このような未曾有の混乱を経て、ポスト・ウィズコロナにおいては、肝移植をさらに安全で効果的な医療として発展させるため、今後とも努力して参ります。
我が国の肝移植は、脳死下提供が進まない中、独自の発展を遂げて参りました。生体肝移植の創出とその目覚ましい発展、そして独自の臓器配分システムの構築などは、逆境に屈しない先駆者達の想像力と実行力の賜物に他なりません。手術手技の向上や術後管理の改善などから、現在では移植後の生存率は著明に向上してきました。今後とも、生命を脅かす肝不全のために肝移植を必要とする一人でも多くの方が救われるよう、さらに有効で公平な臓器配分システムへと改善され続けなければなりません。
また、今後の移植医療においても生体肝移植が重要な選択肢の一つであることを踏まえて、生体ドナーのさらなる安全性確保と保護に関して、継続して取り組む必要があります。そして、移植後の維持期においては、抗体関連拒絶反応、原疾患の再発、感染症、悪性腫瘍、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などの生活習慣病といった合併症の課題に対して、長期予後を改善するための取り組みも継続する所存です。
これらの目的を達成するため、学会運営の新体制では、各種委員会を再編致しました。「医療安全委員会」と「ドナー安全対策委員会」の分担・充実化、肝移植医療の改善を図る学術・研究活動を支援する「学術・教育委員会」の設置、情勢に適した脳死肝移植を実践するための「脳死肝移植適応・選択基準検討委員会」の体制強化がその骨子です。肝移植の更なる発展のため、そして新たな医療の創造と実現に向けて、今後とも努力して参る所存でございますので、ご支援・ご協力頂きますようどうぞよろしくお願い申し上げます。