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はじめに (Foreword)


 私の経歴については履歴書を御覧いただくとして,ここでは簡単に私の研究紹介をしたいと思います.できるだけ平易な表現にしてあるつもりですが,それでも難しかった場合にはご勘弁を(^_^;).

 心室細動という不整脈をご存知でしょうか.心臓突然死のなかで最も多い原因です.それまで元気だった人が突然倒れて死亡するケースは,まずこの心室細動によるものだと考えられます.なかなか予防措置を取ることが難しい上に,一度発症するとそれからすぐに適切な処置を施したとしても死に至ってしまうことが多いのが現状です.実は100年以上も前からこの心室細動という現象は知られていたものの,それが「なぜ,どのようにして起こるのか?」については,いまだ十分に解明されているとは言えません.さらに,胸に2つの電極をあてて電気ショックを与えることで心室細動が停止できることも古くから知られておりますが,これはあくまでも経験的なもので,「なぜ心室細動が電気ショックで止まるのか?」,「どのような方法が最も心室細動の電気ショックに有効なのか?」なども解明されていません.

 欧米では理論的裏付けもあまり無い状態のまま埋込み型除細動器(ICD)がひろく普及しました.予防的措置として組み込む国もあるようです.我国ではICD認可の問題や埋込みに対する国民の意識の違いなどもあって欧米と比べるとまだまだ普及率は低いと言えます.

 心室細動では心電図を記録しても,不規則な波形(タイトル図を参照)が記録されるだけで,実際に心臓の中でどのような電気現象が起こっているのかを理解することはほぼ不可能です.最近,この心室細動が,渦巻型の興奮伝播様式,スパイラルリエントリ(Spiral Wave Reentry)であることが動物実験による多電極高解析マッピングやオプティカルマッピングなどから分かってきました.ですが,これらのマッピングも時空間分解能に限界があること,心臓表面付近しかマッピングできないこと,実験方法や実験施行者の違いにより異なった結果が報告されていることなどから,理論的裏付けを確立するために最近,コンピュータシミュレーションによる数値解析手法が注目されるようになってきました.

 私の研究はそのコンピュータシミュレーションにより,その心室細動の発生・維持メカニズムや薬理学的・電気的除細動メカニズムを探り,心室細動に対して有効な抗不整脈薬や適切な電気的除細動装置の開発などに役立てるための理論的根拠を確立することをテーマとしています.また,シミュレーション結果を確証するため,動物実験グループとの共同研究も合わせて行っています.

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My research interest is in ...
  • Computer modeling and coding for numerical simulations of cardiac arrhythmia.
  • Electrophysiological mechanisms of electrical and pharmacological defibrillation.
  • Clinical electrophysiological study and catheter ablation for cardiac tachyarrhythmia.

    I recently focus on the bidomain model study for cardiac defibrillation.