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研究プロジェクトの概要

日本の医学部医学科は入学者の大半が将来医師になるため、その入学試験(以下、医学科入試)が社会へ与える影響は大きい。 医学科入試で合否を分ける要因の多くは学力試験の成績であり、これはいわゆる「受験学力」を測定した結果である。このように受験学力を特に重視して入学者を選抜することに対して、厚生労働省や日本医学教育学会などから改善するよう勧告がなされている。それに呼応して、面接や高校時代の活動などを重視する評価や推薦入試が少しずつ導入されている。

試験を行う場合に、その試験の方法を検討する観点がいくつか知られているが、特に「妥当性 Validity」「信頼性 Reliability」「実現可能性 Feasibility」「容認可能性 Acceptability」は重要とされている。医学科入試の現状を妥当性の観点から多角的に検討し、今後のあり方について考察する資料を提供することが、このウェブサイトの目的である。

論点1 - 高度な学力を測定することの妥当性

日本では、医師不足の地域出身の志願者を医学科に入学させるための、 いわゆる「地域枠」が政策的に導入され、大学によっては入学定員の過半数を占めている。 この地域枠の入試で志願者に求める受験学力は、 一般枠の受験者と同じ基準にする必要があるのだろうか。

論点2 - 教育格差の影響

格差社会が日本の大きな課題になる中、教育格差も深刻になっている。 現在の日本の医学科入試は、進学校の成績上位者、そして予備校で受験対策を学ぶことができる者でなければ、 合格することがきわめて困難になっている。 裕福な家庭の出身者、進学校の多い都会の出身者が医学科入学に有利になっているという懸念がある。

検討方針1 – 情報を探して共有する

医学科入試の妥当性を検討することは容易ではない。論理としては、入試の最終的な成果を定義した上でその成果を測定することが望ましいだろう。たとえば入試の目的が「医師免許を得ることができる適性がある学生の選抜」ならば、医師国家試験の合格率が一つの指標になる。しかし、これは求められる成果のごく一部に過ぎない。また、教育格差との関連などについて検討するには、受験生の経済状況など医学科入試に関連する社会学的な情報の把握が困難であることが妨げになっているので、まずはこれらの情報を探して共有することから始める。

検討方針2 – 国際比較で視野を広げる

世界の医学科の入学者選抜の方法は多様である。一方、日本の大学入試では、ペーパーテストで大勢の受験生が同時に同じ問題に解答し、その点数で合否を判定するという方法の明快さを、いわば「一発勝負の公平性」として尊重する意見も耳にする。国際比較をすることで視野を広げ、互いの特徴や課題を明らかにしていく。

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