背景
東京大学を含め、日本の大学医学部や医科大学では基礎医学研究を志す学生が減少しており、10-20年後の日本の医学研究を支える人材が極端に不足することが心配されています。
東京大学医学部卒業者のうちで基礎研究に携わる研究者数の推移
アメリカ政府も同様の危機感を持って、既に1960年代から研究医を養成するためのプログラムを開始、大きな成果を挙げています。以下ではアメリカの研究医養成制度であるMedical Scientist Training Program (MSTP)について簡単に説明します。
アメリカでの研究医トレーニングプログラム(MSTP)について
MSTPの概要
MSTPは研究医(physician scientists)を養成するためのコースとして、設置されています。特に医学部出身の研究者は研究室での発見を臨床での診断や治療へと効率良くつなぐことを期待されており、そのような人材の育成が一つの大きな目的です。
アメリカ国内には118のMD/PhDプログラムがあり、現在40以上の大学でMSTPが行われ、900人以上の履修生が参加しています。またアメリカの主要な医学部(特にトップ20の医学部全て)ではMSTPが運営されています。
アメリカでのMSTPの歴史
初めは医学部生の研究者としてのトレーニングコースはアメリカの研究指向の強い大学の独立財源で運営されていました。MDとPhDを取得するdual-degreeコースの最初の例は1956年にCase Western Reserve大学で始められ、その後他の大学へと拡大しました。
1964年になってNIHがMSTPを正式な政府のプログラムとして認め、資金を提供するようになりました。最初のプログラムはAlbert Einstein 医科大学、 Northwestern 大学とNew York大学に設置され、その後もNIHの財源により順調にその数を増やしています。
アメリカでのMSTPへの入学
MSTPは普通の医学部と比較して、入学は大変競争的なものになっています。2011年の統計では、1813名の応募者に対して、入学できたのはその9.4%にあたる170名のみでした。これに対して、一般の医学部への入学は応募者43915名に対して20176名(46%)となっています。MSTPへの応募者は一般的に高いMCATとGPAのスコアを持っている必要があります。
アメリカの研究医養成事業 (MSTP) :まとめ
毎年180名が参加
参加学生には生活費補助(29,000 USD/年)
全米43の大学が拠点
東京大学医学部で行っているPhD-MDコースはアメリカで実施されているMSTPとほぼ同等の制度となっており、早期に医学部学生が本格的な研究活動を行い、博士の学位を取得することを可能にしています。
- 大学院在籍期間(4年間)には一定額の奨学金を支給
- 大学院修了後、学部に復学した際に残りの修業期間(1-2年間)にもコース在籍中と同等の奨学金を支給
- 特別選抜入試を2月2日に実施 申請時期は11月下旬