大会長挨拶


第11回中部放射線医療技術学術大会開催に向けて


第53回日本放射線技術学会中部支部学術大会
大会長 森 光一

銀嶺立山連峰を望む富山市の中心、富山国際会議場におきまして、平成30年11月17日、18日の両日、第11回中部放射線医療技術学術大会を開催いたします。大会テーマは「照于一隅(しょうういちぐう)-一隅を照らす放射線医療技術-」です。この言葉は最澄が修行僧のために書いた「照千一隅」が何故か知ら「照于一隅」と千年に亘って国内に伝え広まり、今ではこの言葉を心の拠り所としている人も少なくありません。「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」「自分に与えられた場所で一所懸命努力している人こそ国の宝である」という意味です。

「駕籠に乗る人、担ぐ人、そのまた草鞋を作る人」、これは「世の中には階級・職業が様々あって、同じ人間でありながらその境遇に差があること」としてのたとえでしたが、現代では「様々な人々が自分に与えられた場所で一所懸命努力して、その力が調和してこの社会が成り立っていること」を意味していると思います。そして、みんながしっかりプライドを持って努力してほしい、そんな願いが本大会のテーマに込められています。

さて、われわれが持つ放射線医療技術は、社会全体から見ればその一部でしかない医療の社会で、さらにその片隅を照らしている技術に過ぎません。しかしその片隅を照らしているからこそ、現代の医療、最先端医療が成り立ち、さらに今日の社会が成り立っているといっても過言ではありません。そしてこの技術を伝承しさらに発展させていけるのは、紛れもなくこれを研究開発し、その基礎データを収集分析してエビデンスを提示し、それに基づいて臨床の隅々で医療を実践している我々なのです。

特別講演では、神経放射線領域で今世界的に注目されているCT解析画像を開発されました富山大学大学院医学薬学研究部(医学)教授 野口 京先生に、市民公開講座では3Dバイオプリンティング研究の世界的先駆者で、「機械で臓器が作れるか」をテーマに、臨床医の立場を離れて先進医工学技術開発の研究に身を置かれている富山大学大学院理工学研究部(工学)教授 中村 真人先生にご講演を賜ります。いずれの先生もバイタリティ溢れ、とても独創的な研究をされており、ノーベル街道北端の地、ここ富山から世界に発信されたイノベーションを是非この機会にお聴き逃しのないよう、聴講されることをお勧めします。

日本が世界に誇る新幹線が開業して約半世紀が経ち、ようやく2015年にこの富山の地に北陸新幹線が開業しました。最先端技術の粋を集めた北陸新幹線を降りましたら、半世紀前に都電をモデルに作られた古い車両の市電に揺られながら、最先端とレトロな鉄道技術の両方を感じてみてはいかがでしょうか。分野が違っても技術を駆使する我々にとって「技術の継承と進歩」を見詰め直す機会となれば、本大会ではいつもと少し違った心持ちで研究発表が聴講できるのではないかと思います。「新幹線や市電に乗る人々、その運行を支える人々、そのまた車両を作る人々」、もうお分かりですね、それぞれの役割が一人で果たせる時代ではなく、すべての人々のプライドという名のエネルギーが融合して明日の社会を創っていくということを。