M Zeidler and others. New variant Creutzfeldt-Jakob disease: neurological features and diagnostic tests. Lancet 1997;350:903-907.
これまで22例の新型異型CJDが見つかっている.うち21例は英国,1例はフランス(このフランスの症例については別にコメントあり)で発生した.うち組織学的に診断が確定した14例のまとめである.
14例中男性6名女性8名で男女差はない.発症時の平均年齢は29(16-48)歳で,古典的なCJDよりはるかに若い年齢で発症する.発症から死亡までの平均は14(9-35)カ月であった.
その臨床的特徴はうつ状態に代表される精神症状と感覚障害である.すべての症例で初期から精神症状があり,そのほとんどはうつ状態だった.13名は初期から精神科医に受診していた.8名はしつこい感覚障害(その多くは痛みを伴う)が初期から悩まされ,その感覚障害は末期まで持続した.筋電図上は異常がなく,中枢(視床)由来の症状と考えられた.(池田注;この論文では体性感覚誘発電位については触れていない)
一方,古典的なCJDでもよく見られる健忘,運動失調,不随意運動は発症から半年前後に現れることが多いので,これらの症状が現れるまでは,うつ状態と感覚障害という,非常に非特異的な症状だけで診断に至らないことになる.全例に出現した.末期には寝たきり,無動性無言の状態にることは古典的なCJDと変わらない.
神経学的所見は,ミオクローヌスあるいは舞踏病様不随意運動,錐体路症状,小脳性運動失調,固縮,原始反射等である.古典的なCJDには見られない障害として上方注視麻痺が14例中7例に見られた.
脳波ではPSDはどの症例にも見られなかった.最終的には全例で徐波化示したが,脳波が異常になるのはほとんど末期に近くなってからであり,中には明らかに痴呆と小脳性運動失調を示しているにもかかわらず脳波が正常だった例もあったので,早期の診断には全く役立たなかった.
髄液の14-3-3蛋白は古典的なCJDの診断には有用とされている.しかし,New variant CJDでの有用性は確認できなかった.というのは14例中検討できたのは5例だけで,14-3-3蛋白が陽性だった2例でも,検体は末期で寝たきりになってからのものだったし,陰性だった残りの3例では何と髄液が冷凍していなかったからだ.(なんともまあヘマな話で,塚越 廣だったら,”あ,あんたなあ,あんたに神経内科の医者をやらせるわけにはいかないんだよお”と真っ赤になって怒鳴り散らすだろう)
脳のCT/MRIは正常あるいは非特異的変化しかみられなかったが,2例のMRIではT2強調画像で視床に高信号が見られた.
PrPの遺伝子は全例でcodon 129がメチオニン/メチオニンだった.