To err is regulation

「事務局」による「根回し」や,「シャンシャン総会」ではなく,PMDA審査と部会の間に本来あるべき緊張関係が取り戻されてきたように見える.しかし,その議論の内容を見ると,およそ科学とはかけ離れた感情論で充ち満ちている.

ミカトリオは他の配合剤同様,ルールに従い開発して申請してきたものであり,これを承認しない選択肢はありえない.3剤だからといって、承認拒否理由には当たらない.「おかしい」というのだったら,どこが,なぜおかしいのかを説明できるだけのデータを集め,根拠を示してルールを変更するのが,大人のやり方だ.それを,「腹いせで通さない」というのはジャイアンのやり口であって,いい大人のやることではない.

チカグレロルの場合は,承認理由が感情論のみで,科学的根拠がない.誰がどう見ても「おかしい」のだから,FDAがどうだろうと,申請者がどうごり押ししようと,こんなもんが承認できるかと突っ返して申請者に考えさせるのが,大人のやり方だ.それを,「世界標準だから通せ」というのはジャイアンのやり口であって,いい大人のやることではない.

このチカグレロルって奴は,クロピドグレルに勝てなかっただけじゃない! アスピリンにも勝てなかったんだ.
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AstraZenecaの抗血小板薬ticagrelorが脳卒中試験でアスピリンに勝てず BioTodayニュースレター 2016年3月24日
急性虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)患者の心血管イベント(脳卒中、心筋梗塞、死亡)予防効果を調べた世界33か国での大規模試験の結果、Astra
Zenecaの抗血小板薬BRILINTA/Brilique (ticagrelor)がアスピリンに勝てませんでした。それら心血管イベントはticagrelor群の方がより少なかったものの有意レベルには至りませんでした。
AstraZeneca heart drug fails in key stroke trial
AstraZeneca reports top-line results from the Brilinta SOCRATES trial in stroke
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ディオバン「事件」の最大の害は,正直者がバカを見る世界を実現した点にある.肝心要の部会で,委員と審査の双方から,ルールも科学も無視した横車が横行する光景は,またもや「臨床開発を真面目にやる正直者はバカを見るだけ.横車を押した方が勝ち」というメッセージを送っている.こんな体たらくで「臨床研究法案」とやらを作っても,誰も正直者になろうとは思わない.またぞろARBが何の略号かも知らないような,自称医学ジャーナリストに対して餌を蒔くだけだ.

審査も部会も互いに横車を押すだけとなれば,そこから出てくる薬は,一切油断がならないことになる.現場の我々が当事者意識を持って「期待の新薬」を批判的吟味せよという教育的警告である.

To err is regulation, a top journal, or a prosecutor.
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「ミカトリオ」、3度目の審議で了承 第一部会 使用対象は“すでに3成分併用の患者”( 日刊薬業 2016年9月7日 )
 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会は7日、過去2回の部会で継続審議となっていた日本ベーリンガーインゲルハイムの降圧3成分配合剤「ミカトリオ配合錠」(一般名=テルミサルタン/アムロジピンベシル/ヒドロクロロチアジド)の承認を了承した。承認条件ではないが、複数の委員からの指摘を踏まえ、3成分の併用投与をすでに受けていて症状の安定している患者が、利便性の観点などから切り替えて使用することを原則とする方針。
 ミカトリオは3成分を配合する意義を問われ、4、5月の部会で継続審議の結論が続いていた。今回、日本循環器学会と日本高血圧学会に所属する医師が配合意義に関する文書を提出したほか、循環器を専門とする第一部会委員の意見も受け、承認を了承した。再審査期間は4年。

「ブリリンタ」は2度目で通過
 5月の第一部会で継続審議となっていたアストラゼネカの経口抗血小板剤「ブリリンタ錠60mg」「同錠90mg」(チカグレロル)も了承した。90mg錠の効能・効果である「経皮的冠動脈形成術が適用される急性冠症候群(不安定狭心症など)のうち、アスピリンを含む抗血小板剤2剤併用療法が適切で、かつアスピリンと併用する他の抗血小板剤の投与が困難な場合に限る」について、有用性を疑問視する意見や、日本人の治験データが少ないこと、他の抗血小板剤(「プラビックス」)との比較で非劣性が必ずしも認められなかったことが問題視されていた。
 今回の部会では、劣勢・非劣性に関する新たなデータは提出されなかったが、「プラビックスとの非劣性が認められないとしても、プラビックスが使えない患者の選択肢としての有用性はある」という趣旨の意見が委員から出たため、承認が了承された。再審査期間は8年。
(以下略)
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