米国医療は辛うじてイタリアに非劣性??
COVID-19でアメリカ人が10-24万人死ぬ。それが大統領閣下の御託宣である。そんなべらぼうな数字が一体どこから出て来るのだろうか?そう思って調べてみると,10-24万人のちょうど中間に位置するのが,第二次大戦の太平洋戦線(対日戦)における米軍戦死者数である(165,639人)。偶然過ぎるように見える。「我々が直面しているのは対日戦に匹敵するほどの厳しい戦いである」とのメッセージを率直に(日本に対しては嫉妬の混じった当てつけとして)伝えたかっただけなのだろうか。彼のやりそうなことだ。しかし,そう断定する前に,2020/4/2現在得られている客観的なデータに根拠を求めてみよう。(COVID-19のデータはworldometersに基づいた:米国,イタリア)
こういう時は,最悪のシナリオを考えるのが御作法である(*注1)。2020/4/2現在の最悪事例であるイタリアにおける単位人口あたりの死亡数は218/100万である。それは3月27日の919人をピークとして減少傾向にある。すでに流行が終息しつつある中国(単位人口あたりの死亡数は2/100万,韓国(単位人口あたりの死亡数は3/100万)の死亡数増減の傾向と合わせても,イタリアにおける単位人口あたりの死亡数は,最終的に500/100万を超えることはないだろう。この500/100万というイタリアのシナリオを米国(人口3億3000万)に当てはめた場合の死亡数は500x330=16万5000人。奇しくも上記の対日戦での米軍戦死者数に一致する。(10-24万人という範囲の妥当性については各自で検討されたい)
*注:この「最悪のシナリオ」には,明らかに米国がイタリアに対して圧倒的に有利になる(推定死亡数がはるかに少なくなる)以下のような背景因子が全く考慮されていない。16万5000人というのは,小学生の算数の結果に過ぎないのである。
●社会的距離を規定する主要因子の一つである人口密度(イタリア199人/平方キロ,アメリカはその1/6の32.7/平方キロ)
●高齢者人口の割合(イタリア23%,米国16%)
●世界最高の医療水準
●医療の予備力としての軍隊の存在:グランド・プリンセスへの対応(検査,乗客移送,隔離)は全て軍の協力無しには不可能だった。
●世界で唯一のCBRN対抗医薬品の開発体制
上記の条件を加味すれば,米国におけるCOVID-19によるイタリアよりもはるかに少なくなることは明白だ。では大統領閣下はなぜ,小学校の算数でお茶を濁し,「ウチはせいぜいイタリアさん並みの実力しかありせんので」と言わんばかりの,Saturday Night Liveばりのトンデモ記者会見を行ったのだろうか?「私はこの3年間でアメリカを再び偉大な国にした」と言いたくて今からうずうずしているのはどこのどなた様なのだろうか?結局,「私がこの3年間で偉大にした米国の医療は,中国を含めて,イタリア以外のすべての国に劣っている。イタリアにはかろうじて非劣性」ってこと??とんでもない!!
もちろん彼は米国医療は世界一だと信じて疑っていない。ただ,どうしても再選を果たしたい。再選を果たすためには,肝心の死者数を第一次大戦後のドイツ並みのハイパーインフレにして,(かつての)ベルリンの壁並みに頑丈な予防線(表現が矛盾してないか?)を張っておく必要があるのだ。それは,上限の24万人という数字の根拠を考えるとより明らかとなる→米国特有のCOVID-19による死亡リスク ハイパーインフレは嘘ではない.豊かな想像力の産物に過ぎない.よしんばその数字に何の根拠がなくても,どんなほらを吹いても,他国の大統領のように,後任者によって刑務所に送られることなど絶対にない.あるかなきかのここちす「大量破壊兵器」を理由に他国に戦争を仕掛け,その国土を市民の命と共に蹂躙しても,楽隠居生活が保証されているのだから.
参考資料
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森永 知美【緊急寄稿 米ミシガン発現地レポート Part5】 感染者数横ばい ソーシャルディスタンスの効果現れる (ミクスオンライン 公開日時 2020/04/24 (抜粋)
(死亡者の人種格差)
ミシガン州の死者数はニューヨーク州とニュージャージー州に次いで3番目に多く、州人口に対して不釣り合いな状況が続いている(*)。その40%をアフリカ系アメリカ人が占めており、同人種の州人口全体に占める割合が14%であることを踏まえると、明らかに人種格差がある。そこで知事は特別委員会を結成し、原因究明と対応策の提言を進めていくと発表した。
*池田注:2020/4/27の時点では,対人口100万人の死亡数では,ニューヨーク州(1135),ニュージャージー州(669),コネチカット州(537),マサチューセッツ州(424),ルイジアナ州(371)に次いで6番目(333)に多い。
◎高齢者介護施設での感染拡大に大きな懸念
州内では少なくとも243カ所の介護施設で感染が確認されており、緊急の対応策を必要としている。例えばデトロイト市では、ポイントオブケアで感染の検査結果が即座に判明する検査機器を活用し、市内にある高齢者介護施設(Nursing home)26カ所全ての入居者と介護スタッフを調べている。今のところ約1300人の検査が終了し、感染率が約26%で死者は124例(*)に上ることが分かっている。数日以内に全施設の検査が完了する予定で、来週には各施設の感染データの詳細を報告できるだろうとDuggan市長は述べている。
(*池田注:デトロイト市の人口はわずか67万(2018年)である。ちなみに,2020/04/24時点での日本での死亡者数は232名(確定数)である)
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イタリアにおける過去のインフルエンザ関連死亡については下記の論文を参照
Trends for Influenza-related Deaths during Pandemic and Epidemic Seasons, Italy, 1969-2001. Emerging Infectious Diseases. 2007;13(5):694-699.
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【イタリア】99%は以前から疾患…老人多く院内感染もイタリア、コロナ死者最多のなぜ 産経新聞2020.3.24
新型コロナウイルス感染による死者が世界最多となったイタリアで、死者の99%は感染前に別の疾患を抱えていたことが分かった。国の人口が高齢化する中、震源となった北部で院内感染が広がったことが、死者急増の原因とみられている。
イタリア国立衛生研究所の17日の発表によると、感染による死者のうち、3つ以上の疾患を抱えていた人は49%。全く疾患がなかった人は0・8%にとどまった。死者の76%は高血圧で、36%は糖尿病にかかっていた。感染者の平均年齢は63歳前後だが、死者の平均は79・5歳と高い。
感染拡大が最も深刻な北部ロンバルディア州の医師は伊紙レプブリカで、「最初の患者は風邪と思って病院に来た。医師は対応後、十分消毒しなかった」と対応のミスがあったと認めた。1月時点で州内で肺炎患者が増えているとの報告があったといい、「ウイルス感染は1月には始まっていたのではないか」として、感染確認が遅れた可能性を示した。
伊紙コリエレ・デラ・セラによると、20日までに、治療にあたった医師の14人が死亡。医療関係者の感染は約3千人にのぼった。
イタリアの感染拡大は2月後半、ロンバルディア州とベネト州でほぼ同時に感染者が発覚したのがきっかけ。現在、ロンバルディア州は感染者のほぼ半数を占め、拡散のスピードに大きな地域差がある。イタリアは65歳以上が人口の22%で、欧州連合(EU)最多。高齢者人口の割合は日本に次いで、世界で2番目に高い。
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→コロナのデマに飽きた人へ