無保険者と薬物と人種差別と:COVID-19における米国特有の死亡リスク
―24万人という非劣性マージン上限設定の理由―
米国医療は辛うじてイタリアに非劣性??から続く
上の表は,先進諸国における,2009年の新型インフルエンザによる死亡数及び人口10万対死亡数一覧表である。人口対10万死亡数は米国が飛びぬけて高く,日本の25倍となっている。 厚生労働省 新型インフルエンザの診療に関する研修 2011年11月6日 岡部信彦先生のスライドより.
COVID-19でアメリカ人が10-24万人死ぬという大統領閣下の御託宣の根拠を検討したところ,決してでたらめではなく,イタリアを最悪のシナリオと考えれば,合衆国内でも17万人近くが死亡するという計算が成り立つことがわかった。その一方で24万人という上限の根拠が明確ではなかったので,検討したところ,下記の2つの問題が浮かび上がった。いずれも彼の在職中に悪化した問題である。大統領閣下はこれらの問題に決して触れられたくはないのだが,現実として重大なリスクであるがゆえに,イタリアに対しても劣性となるリスクを考慮し,24万人までマージンを広くせざるを得なかったのである。こうすれば,たとえ死者数が23万人に達しようとも「勝利宣言」できるし,9万人ならば(たとえそれば中国にボロ負けの結果であっても)
COVID-19に対する奇跡の勝利と大演説をぶてるのだ.
無保険者は「客」にならない
アメリカで相次ぐ病院閉鎖、コロナ患者は儲からない ニューズウィーク日本版 ベンジャミン・フィアナウ 2020年4月27日(月)
Michigan Rep Blasts Hospitals for Closing During Pandemic: 'Not Profitable'
<パンデミックが地方に及ぶのを前に、地域で唯一の病院が突然閉鎖するケースが続出。コロナ患者が入院すると利益が上がらないからだ、と地元議員は批判する>
「(新型コロナの)病人の治療は利益が出ないから、病院を閉鎖するのだ」とトライブは言った。「COVID-19専門病院になったら、金は稼げない。病院
を閉鎖するのは、実際に病人の治療をしなければならないから。高額の手術やその他の利潤追求の医療から利益を得ることができいからだ」
米国の医療保険未加入者、10年ぶりに増加 2020年大統領選の争点の一つになるかもしれない (WSJ 2020年4月2日)
米国勢調査局のデータによると、2018年の医療保険未加入者数は2750万人に増えた。医療保険制度改革(オバマケア)により、未加入者数は過去数年にわたり減少傾向にあったが、昨年は前年比で10年ぶりに増加に転じた。医療保険未加入者が人口に占める割合は約8.5%となり、2017年の7.9%(2560万人)から上昇した。
The uninsured rate had been steadily declining for a decade. But now it’s rising again. (Vox Sep 10, 2019)
The number of uninsured Americans is rising again, according to the Census Bureau, an abrupt reversal of a trend of increased coverage since the Affordable Care Act became law. In 2018, the number of people in the United States without health insurance rose to 27.5 million, up from 25.6 million in 2017. The uninsured rate jumped from 7.9 percent in 2017 to 8.5 percent in 2018. It was the first year-to-year increase in uninsured rates since 2008 and 2009.
コロナ危機でアメリカ版「国民皆保険」への支持が急上昇 ニューズウィーク日本版 2020年4月2日(木)15時30分
<従来からの無保険者だけでなく、雇用主を通じて医療保険に加入していたアメリカ人さえもロックダウンで失業、医療保険も失っている。最近の調査では、55%が皆保険を支持すると回答した>
薬物依存
オピオイド危機で疼痛学会が突如解散:オピオイド危機が如何に深刻なものか,なぜそんなことになってしまったのかがよくわかる記事
National Institure of Drug Abuse COVID-19: Potential Implications for Individuals with Substance Use Disorders
喫煙・電子たばこ・薬物使用、新型コロナ感染症のリスク高める可能性
主要な国の薬物別生涯経験率
人種差別の影響
この問題を正面から取り上げるメディアは合衆国内には少ない。下記は英国はThe Guardianの記事である。
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Longstanding health and socio-economic disparities have made minorities more vulnerable to Covid-19. The Guardian. Sat 25 Apr 2020
“It’s an education system issue, it’s a health and resources system
issue and it’s a public transportation issue,Cedric ‘C-sharp’ Redmon,
St Louis youth ambassador.
そもそも肝心要の統計データからして,なんと人種別にデータを出している自治体がたった1/3(36%)だという。それも肝心要のCDCが人種別のデータを出すことに消極的だからとのこと。The Centers for Disease Control and Prevention (CDC), the administration’s leading public health agency, has begun to publish more detailed data on the racial breakdown of confirmed coronavirus cases. But of the 828,441 confirmed cases documented, only 36% are broken down by race, largely due to many states and municipalities not recording racial data on those who test positive. According to the Associated Press, the CDC has offered little pathway to assist local governments to better record this information.
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結局,下記のようなanecdotalな記事から推測するだけに終わってしまう。
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森永 知美【緊急寄稿 米ミシガン発現地レポート Part5】 感染者数横ばい ソーシャルディスタンスの効果現れる (ミクスオンライン 公開日時 2020/04/24 (抜粋)
(死亡者の人種格差)
ミシガン州の死者数はニューヨーク州とニュージャージー州に次いで3番目に多く、州人口に対して不釣り合いな状況が続いている(*)。その40%をアフリカ系アメリカ人が占めており、同人種の州人口全体に占める割合が14%であることを踏まえると、明らかに人種格差がある。そこで知事は特別委員会を結成し、原因究明と対応策の提言を進めていくと発表した。
*池田注:2020/4/27の時点では,対人口100万人の死亡数では,ニューヨーク州(1135),ニュージャージー州(669),コネチカット州(537),マサチューセッツ州(424),ルイジアナ州(371)に次いで6番目(333)に多い。
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