よく,統計学的に有意な変化だが,臨床的意義は疑わしい,いや,臨床的にも意義はある,という論争に出くわす.この論争に決着をつける名案はない.名案がないから,プラセボの効果と比較して統計学的に有意な差があったことを持って,その薬剤の有効性が証明されたという結論になりがちである.これはなぜだろうか?臨床医が,何が有意義なのかを明示することができないからではないだろうか?
下記は,統計的に有意な差はあったが,臨床的意義はないと結論した,珍しい論文である.この論文の論旨展開は明快で,最初に,実薬(この場合は針治療なのだが)が,プラセボの効果を30%上回ると仮定し,そのために必要な症例数を設定した.結果は,プラセボとの差が12%であり,統計学的には有意な差があったが,当初想定した30%を明らかに下回ったので,臨床的にはプラセボに優る有効性はなかったと結論している.
White P and others. Acupuncture versus placebo for the treatment of chronic mechanical neck pain. Ann Intern Med 2004;141:911-9.