歪んだパターナリズム

古巣に戻った新薬審査OBが、所属学会で、新薬の開発についてパネルディスカッションのパネリストに指名されての愚痴への返事です。
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> 行政の立場から発言しろと言われて困っています
結構なことじゃないですか。困ることはありません。我々(行政も、企業も、臨床医も、誰もが)実際困っていることを訴えればいい。ここで注目すべきは

> 行政の立場から発言しろ
という要請の背景にある歪んだパターナリズムです。一方で、お上のお墨付きを求めるパターナリズム、他方で何か都合が悪いことが起こったら行政の責任と決め付ける、日本国中で蔓延する底意地の悪い態度です。しかし、こういう歪んだパターナリズムはほとんどの場合自覚されていません。未成熟もいいとこ。

ならばそこを逆手にとって、informed choice/decisionをさせればいい。極端な情報非対称性が存在する医者と患者の間にさえ、informed choice/decisionなるものが存在する建前になっている。ましてや、官と産学では、産学の方が持っている情報量は圧倒的に多い。

ならば、文句を言うんだったら、あんたがた自身でリスクをとりに行け と突き放す。もしそうなったら、厚生労働省も医薬品医療機器総合機構も要らないということになりますが、私はそれもありだと思っている。というか、そういう方向に持っていかなくてはならない。個々の家庭レベルの成熟に伴って親離れ・子離れが必要なのと同様に、我国が高齢化社会とか言うんだったら、国全体でもお上離れ・国民の皆様離れも必要です。

未成熟な国民の皆様を、儒教的な雰囲気に満ちた親心で受け入れ続ける官僚と政治家という構図はいつまで持つのでしょうか。いや、すでにそれは幻影になっているのでしょうか?幻影になっていないとしたら、お上離れは競争で促進することができるでしょうか?
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