余命宣告平均余命

D’ailleurs, c’est toujours les autres qui meurent. (Marcel Duchamp)

人は誰でも生下時に余命宣告されている.しかしその具体的な数値は当人を含め地球上の誰に対しても秘密にされている.どんな有能なハッカーであれ,予言者であれ,この数字だけは不可知である,ただし平均値は厚生労働省によって一般に公開されている.こういう時代だから年齢と性別を入力すれば平均余命がわかるサイトもある.ただし,あくまで平均値である.

ご存じのように平均値とはピンポイントである.つまりこれから外れる人の方が圧倒的に多い,というより,全ての人は平均値から外れたところで死ぬ.だから平均余命表は,生命保険会社の収益には貢献しても,あなたの役には立たない.

そうやって当人が死ぬ時,看取るのはいつも他人である.マルセル・デュシャンの言う通り,死ぬのはいつも他人ばかりである.かくして生ける者には死に行く者としての当事者意識は生まれない.

蛇足:この言葉は,「もちろん」彼の墓誌になっている.

参考:後ろめたさからの解放 病院の誕生と文学の衰退、そして脳帝国主義への逆襲へ

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