後発品論争は八百長試合だ。なぜなら、推進派も反対派も科学的根拠を持ち合わせていないから。(→参考) 相手の主張にエビデンスがないことは、ちょいと調べれば学生でもわかることだ。なのに、互いに相手の急所を突くことなく、延々と論争が続いている。これを八百長と言わずして何と言おうか。
日経メディカルオンラインでも説明した通り、世界中何処を捜しても、後発品使用を促進によって医療費が抑制されるエビデンスは無い。後発品使用をどのくらいの割合にすればどれだけ医療費が抑制されるのか、介入群間比較試験はおろか、コホート研究さえ、寡聞にして知らない。横断的に検討しても、後発品使用が医療費抑制につながるというデータは出てこない。国際的に突出した医療費超大国である米国の後発品使用の割合は数量ベースで69%で、日本は20%だ(1)。国内で見ても、沖縄県は後発品の割合が30%を超えて全国一高い半面(1)、1人当たり医療費(年齢補正後)は全国平均よりも高く、47都道府県中19位だ(2)。一方、1人当たり医療費が全国一低い千葉県(2)での後発品割合は全国平均の20%に届かない(1)。
(1)武藤正樹.ジェネリック医薬品と保険者ージェネリック医薬品の基礎知識
(2)厚生労働省保険局調査課
平成21年度 医療費の地域差分析
この八百長試合の目的は、財務省という、お客さんの目を楽しませること。うるさく言われないためには、華々しく喧嘩をしていますよという素振りが必要なのだ。もし本気で医療費を抑制(=本来の意味での(!)エビデンスに基づいた医療を)しようとしたら、
●アンギオテンシン受容体拮抗薬は、アンギオテンシン変換酵素阻害薬を使えない科学的・合理的理由がある患者に限る(実際、スウェーデンでの医療経済評価ではこうなっている)
●新規抗凝固薬は、原則使用禁止。個別化医療が確立したワーファリンを使え
●急性期脳梗塞の診断にはMRIではなく、X線CTを使え
●エゼチミブはスタチンを最大容量使ってもLDLコレステロールが明らかに高値に留まる例に限る
という議案を巡って、中医協は本気で殴り合いの場となること請け合いである。