今でも愛している
ーあるいは「バカな子ほど可愛い」?ー
病を得るものであって、闘う相手ではありません。少なくとも私には、有名人の「闘病」を「感動的」に伝えて今日も収益を上げるメディアに噛みつく用意は
あっても、病と闘うほどの度胸はありません。生老病死は貴重な学習資源です。患者が病から学ぶ。その姿に学ぶ我々医師にとって、特に同業者である医師が重
い病気になった際の記録には、非常に示唆に富むものがあります。懲役を食らった検事さんの話も、重い病気にかかった医者の話を同様に、我々にとって貴重な
学びと考えてここにいくつか紹介する次第です。
前田恒彦さんも、三井環さんも、郷原信郎さん(刑事訴追経験無しも)、みんな「今でも検察を愛している」っ
て言うけど、いくら至上の愛を告白しても、全然届いていませんよね。メッセージの内容は決して間違っていないと思うのだけれど、メッセージが届いていない
のか、それとも検察の偉い人達(特に赤レンガ組?←三井さん?)聞く耳がないのか。どちらかだとして、まずは、メッセージを届ける役目を負っているはずの方々の完全黙秘をどうにかせんといかんのじゃない
でしょうかね。だって、前田さんのこんな「熱い」メッセージの数々が、国民の皆様に全然届いていないじゃないですか。「国民の皆様」から自分たちの「不都合な真実」を隠蔽しようとする大手メディアの皆さんの御努力には、本当に感心します。
(公
式には最良証拠主義と言われる)検察による証拠隠しと、全面可視化拒否は、結局検察は自分で自分の首を絞め続けている。というのが表向きの構図だが、メ
ディアはそれすらも報道しない。もう少し踏み込んで言うと、検察内での内部抗争が検察の機能を麻痺させている。すなわち、現場を知らない赤レンガ組が、特
捜を中心とする実務者に対し、前世紀型の取り調べ、捜査、起訴・公判維持の枠内で「業績を上げろ」とタコ部屋労働を強いている。実務者達は、業績を上げる
ために互いに競争し、対立し、内部抗争を繰り返しながら、競争相手を陥れる隙を狙っている。そして実際に刺される犠牲者がこうして出てくる。
検事の数は全国でも2000人に満たない、その強大な権力に比べて、こぢんまりした組織である検察は、常に一枚岩のような結束の堅さを誇っているように思われているが、その実は、嫉妬、競争、恨みが渦巻いている。これではまともな仕事ができるわけがない。
以下は前田恒彦氏(元検事)の陸山会事件裁判における証言から(2011年12月に行われた【小沢被告第10回公判】MSN 産経ニュースより):失う物は何もないという強さ(開き直りという表現を使いたい人はどうぞ)
前田元検事は2010年1~2月、大阪地検特捜部から東京地検特捜部に応援で入り、大久保隆規元秘書の調べを担当した。大久保元秘書は、政治資金収支報告
書の虚偽記載への自らの関与を認める内容の供述調書に署名したが、小沢氏の公判では「威迫や誘導があった」と主張した。2010年10月に東京第五検察審
査会は2004年と2005年の土地購入経緯について小沢を起訴議決相当としたことを受けて、2011年1月に指定弁護士によって小沢が強制起訴された。
2011年12月16日に行われた第10回公判で、指定弁護士、つまり検察審査会の決定に従って小沢氏を起訴・公判請求が「前田元検事の取り調べは適切
だった」と立証するため証人として服役中の前田元検事呼んだ。その時の証言からの抜粋である。下記で、用語がややこしいが、指定弁護人とは小沢氏を起訴・
公判請求した側であり、弁護人とは小沢氏を弁護する側である。
前田氏のキャラについては次のような記述もあるので、御参考に→「さぬきうどんを捏ねる」――検察と政治(その1) 2010年10月4日
また、この証言は、証拠改竄事件で懲戒免職を受けた立場にある前田氏の発言だから、特に自分に処分を下した検察首脳と、大阪地検特捜部にいた自分を「割り屋」として使いながら、無傷のままでいる東京地検特捜部に対するバイアスは当然考慮しなければならない。
当
時私はこの公判を、小沢氏の無罪が決まっているしょーもない出来レース延長戦、検察による無理ゲーはすでにもう明らかになっているのに、検察審査会はこん
な屋上屋を重ねる暇人集団、指定弁護士も災難だなと同情するぐらいだった。ところが前田氏はこの場を最大限に利用した。
彼の証言から、人間の心理を読み取る才能がないと、説得力がありかつ頑健な調書は決して書けないこと、彼はその才能に長けていたからこそ、「割り屋」として大阪の特捜からわざわざ東京の特捜に呼ばれたことがわかる。
「私は社会的に死んだ身で、死人に口なしで言い返せない立場にあるが、大久保さんの公判での証言はあまりにでたらめ」
「私は当時の検察捜査にも問題があったと思っています。検察が起訴した事件ではありませんので、今回は検察の有利、不利を問わず、すべてお答えするつもりです」
指定弁護士「陸山会事件の特捜部の捜査に問題があるといいますが、簡単に説明を」
証人「簡単にというか…、いろいろあるが、筋が違うんじゃないかと思う」
指定弁護士「それは捜査の方法か、(事件の)見立てについてか」
証人「一番は見立てですが、私以外の検事の取り調べがどういうものだったのかについても聞いて知っていますので、それにも問題があったと思っています」
「この事件はマスコミが非常に注目していた。私は大阪では(聴取で供述を引き出す)『割り屋』といわれていましたので、マスコミから尾行(*)もされていた。私の担当が事前に漏れると、いろいろ次の展開を憶測される恐れがある。このときは情報がコントロールされていたということだと思います」
(*検事を尾行するマスコミって・・・おめえら、何やってんだよ!)
「その際、木村キャップからは『この件は特捜部と小沢の全面戦争だ。小沢をあげられなければ特捜の負けだ。恥ずかしい話だが、東京には割り屋がいない。だから大阪に頼ることになった』といわれた」→やっぱり真相なんかどうでもよくて、この反社会的勢力にとっても、シノギに勝つというのが至上命題なわけで
指定弁護人「今となって『検事が作った』などと言われるのは心外ですか」
証人「心外ですけども、(被告が)しゃべったことが調書になるわけだけど、(罪を逃れるためには)検事が悪いとか、あるいは検察が悪いとか言わないといけないわけですよね。大久保さんがいろんなことを言っていますが、腹を立てているということはないです」(クール!)
指定弁護士「あなたは、ある事件の証拠に手を加え、検察を解雇され、服役中ですか」
証人「はい」
指定弁護士「なぜ改竄したのですか」
証人「話すと5、6時間かかりますが、端的に言うと、検察の体面を保つことと、自身の保身のためです」(正直!)
指定弁護士「主任検事として大きなプレッシャーを感じていたのですか」
証人「はい」
指定弁護士「本件でもそうですか」
証人「それは全然違います」「厚
生労働省の事件では、大阪高検検事長が積極的で、単独犯ではあり得ないという雰囲気があった。一方で、本件では(ゼネコンからの)裏献金で小沢先生を立件
しようと積極的なのは、東京地検特捜部特捜部長や■■主任検事(法廷では実名)など一部で、現場は厭戦(えんせん)ムードでした。東京高検検事長も立件に
消極的と聞いていましたし、厚労省の事件とは比較になりませんでした」「大
久保さんを取り調べましたが、『とても無理ですよね』と感じました。小沢先生を土曜日に取り調べて、当時の特捜部長だった佐久間(達哉)さんらが東京拘置
所に陣中見舞いに来ました。そのとき、私と○○検事(法廷では実名)、△△検事(同)が向かい合って座っていました。佐久間さんは『雰囲気を教えてくれ』
ということを言われました」
「(前田元検事の上司だった)大阪地検
の特捜部長であれば、怒鳴られて言えないけど、佐久間さんはそんなことはなかった。『大久保はどう?』と聞かれたので、『頑張ってみますけど難しいです』
と暗に立件は無理と伝えました。他の検事も同じようなことを言っていたと思います。一部積極的な人もいたが、小沢先生まで行くことはないと思いました」
「最初に、■■主任検事が小沢先生を割れませんでした。主任が負けて帰ってきたのに、そんな主任のもとで頑張ろうとは思いませんでした」
指定弁護士「あなたは無理せずに適正に調書を作成したということですね」
証人「はい」
指定弁護士「東京地検の見立てがまずいと思ったのは、企業献金の筋の見立てが大きいですか」
証人「そうですね。もっと小沢先生周辺や奥様の資金周りを調べるべきだと思いましたが、それができていなかった。4億円が企業からの献金と『妄想』する人もいたが、正直ついて行けなかったですし、ついて行きませんでいた」
弁護人「東京地検特捜部は大阪地検特捜部の捜査を中断させても応援を取るような上位にあるのですか」
証人「本当にふざけるなという感じですよね。大阪は厚労省事件があっても東京から応援を借りることはないのに…」
証
人「1回目(の指定弁護士との打ち合わせでは)はざっくばらんに、捜査の問題点を含めて申し上げた。『私は小沢さんが無罪だと思う』『指定弁護士も職務上
大変ですね』と。捜査にいろいろ問題があったことも言いましたし、証拠隠しのことも…言ったかな? 言わなかったかな?」
弁護人「証拠隠しって何ですか」
証人「要は、私が裁判官なら、『無罪』と判決を書く。証拠がすべて出されたとしても…」
弁護人「いや、『隠された証拠』ってなんなんですか」
証
人「私が思っているだけですけどね。判決では検察審査会の起訴議決が妥当だったかどうかも審理されるわけですよね。そこで検察が不起訴と判断した資料とし
て検審に提出されるもので、証拠になっていないものがあるわけですよ。例えば、(自分が取り調べを担当した)大久保さんの調書には全くクレームがないけ
ど、石川さんの調書にはあるんです。弁護士からのクレーム申入書が。でも(指定弁護士との)打ち合わせのときに、指定弁護士は知らなかった。検審に提出さ
れた不起訴記録に入っていないから」(「恒例の」証拠隠し)
「水
谷(建設)で言えば、4億円の原資として5千万円は水谷かもね、となっても、残りの3億5千万円については分からない。何十人の検察官が調べて、出てこな
い。検審にそれが示されれば、水谷建設の裏献金の信用性も、減殺されていたはず。想定に合わなければ証拠にならないというのがこれまでの検察で、私も感覚
がずれていて、厚労省の(証拠改竄)事件を起こすことにもなった」
弁護人「最初から検事志望だったんですか」
証人「司法修習生時代ですか。はい」
弁護人「検事になって14年間勤めたんですね」
証人「そうですね」
弁護人「そのうち特捜部は9年ですか」
証人「はい、約9年です」
弁護人「あなたは『私の行為で検察の信頼が失墜してしまった負い目を感じている。ですが、特捜部も検察も愛しています』と話されていたようですが」
証人「はい」
弁護人「今でもそうですか」
証
人「今でも愛しているからこそ、今、改革が進んでいますが、2点を改革すべきだと思います。一つは、手持ちの資料は全て開示する。検察に不利な証拠があっ
たことが後に判明することは、今の“流行”みたいなものです。私の件をきっかけに大きく検察組織を変えるなら、検察だけの判断で『この証拠は出さない』と
いうのはやめるべきです」
「もう一つは、強制だろうが、任意だろうが、捜査の様子は可視化すべきです。今回の件でも、大久保さんにはかなりデタラ
メを言われた。検事が改竄したか、しないかなんてのは不毛なやりとりなんです。だから、可視化を進めるべきです。供述調書も作らずに、録音録画する。そこ
まで検察が改革に踏み込めるかどうかです。検察、特捜は今でも愛しています」
「今は被疑者から自白を取った検事が悪いかのように思われている。確
かに自白を取ることは被疑者にとってつらいことだけど、真実を引き出そうというのが検察。それが突然、公判で『言ってない』とか供述が覆っておかしくなっ
て、(裁判で証人として)呼ばれる。それは心外です。それを避けるために可視化すべきです」(MSN産経ニュース【小沢被告第10回公判(9)】 2011.12.16 18:01)
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