リテラシーは誰のためか?
ー記者と国民の皆様の使いようー
下
記は米国のバイオベンチャーが臨床試験結果の失敗をごまかして発表したのを、投資新聞の記者がすっぱ抜いたという話だ。「どうせあいつらにはわかるまい」
と、会社が新聞記者と読者の両方をなめてかかって報道発表するから、こういうことになるのだが、こういうことになったのは、記事を書く記者と読者の両方に
臨床試験のリテラシーが備わっていたから。その時、記者と読者のどちらのリテラシーがより重要かというと、実は読者のリテラシーの方である。というのは、
い くら高いリテラシーを持った記者が良質な記事を書いても、読者がそれを理解できなければ、NeoStem社の株価は高止まりしたままだったろう。
そしてTheStreetの読者は損失の危機に晒されていたから。
金を払ってTheStreetを購読している読者のリテラシーが読者自身を救ったのだ。もしNeoStem社との間に利益相反問題を抱えた記者が提灯持ち
記事を書けば、The
Streetはそんな奴は即刻クビにする。いや、もともとそんなバカな記者は雇っていないのだろう。それもこれも、金儲けにうるさい読者がThe
Streetの記事を厳しく審査しているからだ。自分の懐具合に対する執着心が臨床試験リテラシーにつながり、そのリテラシーが自分の財布を守る。これが
アメリカ合衆国の資本主義の素晴らしさである。こんな国と戦争して勝てるわけがなかったのである。金儲けにうるさい点では、日本の隣にある超大国もアメリ
カ合衆国に勝るとも劣らない。だからそんな国とは絶対に戦争してはならないことは小学生でもわかる。リテラシーは懐具合だけでなく、自分の命も守るのだ。
では、我々市民の声を反映する責務を負っているはずの我が国のジャーナリスト達はどうだろうか?残念ながらAdam Feuersteinと、Forbes
記事の日本語抄訳しかできなかった(それも1年もかかった!)医学ジャーナリス
ト協会賞受賞記者達との間には、太平洋の対岸よりもはるかに遠い距離がある。
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NeoStem社の心臓発作幹細胞治療の死亡率低下は無意味/TheStreet Biotoday 2014-11-20
米国の株式情報サイトTheStreetの記者Adam Feuerstein氏は、第2相試験(PreSERVE
AMI試験)の結果発表でNeoStem社が強調した心臓発作幹細胞治療NBS10の死亡率低下は臨床的に無意味と評しています。少数の患者の僅か1年の
追跡データに基づく死亡率改善の主張は臨床的に無意味とFeuerstein氏
は言っています。また、Feuerstein氏も詳しく解説している通り、主要評価項目の一つ・心臓への血流がNBS10とプラセボで有意差がついておら
ず、 NeoStem社の株価は大幅に下落しました。
NeoStem's Stem Cell Therapy Fails Mid-Stage Heart Attack Study
http://www.thestreet.com/story/12957358/1/neostems-stem-cell-therapy-fails-mid-stage-heart-attack-study.html?utm_source=inlinespeeddesk&utm_medium=TSC&utm_campaign=inlinespeeddesk
NeoStem Announces Initial Positive Data from Phase 2 PreSERVE AMI
Clinical Trial
http://globenewswire.com/news-release/2014/11/17/683957/10108553/en/NeoStem-Announces-Initial-Positive-Data-from-Phase-2-PreSERVE-AMI-Clinical-Trial.html
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太平洋のこちら側では、「どうせあいつらには、これが世論操作とはわかるまい」と検察が大手メディアの記者と読者・視聴者の両方を頭から馬鹿に
して、報道発表を垂れ流し、それがそのまま目出度く「関係者への取材によると」で始まる人気記事になって、検察を神と崇める国民の皆様にご愛読い
ただける。
検察にとっても大手メディアにとっても、何ともまあお気楽な国である。脈の取り方一つ知らないのに、国の認定基準に従ってミトコンドリア病を診断
した裁判官も全く同様である。そのようなお気楽な国で検察官・裁判官は、皆、国家公務員として身分を保障され、高い給料が税金から支払われてい
る。どなたも「官僚・役人」と国民の皆様からは決して攻撃されない結構な御身分である。
相手を心から軽蔑している人間は、決してそのことを相手には伝えない。「バカとはさみは使いよう」とばかりに、そいつを利用するだけである。
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