PMDAの教育担当

ある製薬企業の社員の方々に,コミュニケーションの性差についてお話した後,御丁寧なメールをいただいた.その返事.

御丁寧にお手紙ありがとうございました.

問診の際には音声言語で,診察の際には非言語性メッセージで,常に医者に教えてくれる,医者を助けてくれる患者さんは,医師の教育者であると申し上げました.同様の意味で,実は企業が規制当局の教育者なのです.

> 先生のお話やお人柄から、PMDAにも先生のように豊富や知識を持たれ、また物事を高い視点で俯瞰されている方もおられることを痛感したと思います。

褒めていただくのは嬉しいのですが,2003年7月に私が旧審査センターに入った時,私は,治験のことなど,何も知りませんでした.何を隠そう,それまでは,新GCP下での治験はおろか,旧GCP下の93年当時,2回治験に関与しただけで,それ以降10年間,一度も治験に関わったことのない,とんでもない医者だったのです.

当時私はすでに47歳.新潟なんて田舎は飽きた.東京に戻りたいが,さりとて臨床を続ける自信も体力もなく,製薬企業なら,東京のオフィス街で楽ができるだろうと,そんなよこしまなことを考えていました.そんな医者を雇う企業など,どこにもありません.製薬企業の面接は,ことごとく失敗し,「医師免許さえ持っていれば誰でもいい」と,有難い(?)お誘いの言葉で,ようやく旧審査センターに拾ってもらったというわけです.今の採用基準では,絶対にPMDAには採用してもらえません.

では,そんなトンデモ医者が,どうして御社のような優良製薬企業の方々に向かって,偉そうにお説教を垂れるような真似をするようになったのか?

審査・相談は企業の方々相手の商売です.ですから,私が育ったのも,企業の方々のおかげです.ちょうど患者さん達が,臨床医としての私を育ててくれたように.

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