試験中止のエビデンス

投与初期の死亡率が高かった時点で、非扁平上皮がん患者を含めて試験を中止すべきだったのに、非扁平上皮がん患者に絞って試験を続行した上に、結果も有効性が示せず、有害事象の頻度も対照群より高かったのは、たとえ非扁平上皮がん患者に情報開示し、同意を取り直していたであろうとはいえ、倫理的に重大な問題があります。それに、同意を取り直す時点で(当然脱落例が生じて)ランダム化は崩れてしまうわけですから、得られるデータの質もそれだけでは承認申請に足りない、極めて不十分なもの、参考資料扱いにになってしまいます。ですから、二重の意味で、2008年11月に試験は中止すべきだったのです。
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武田薬品など3社  モテサニブ、非扁平上皮がんでOS延長せず( 日刊薬業 2011年3月31日 )
 武田薬品工業と米子会社ミレニアム・ファーマシューティカルズ、米アムジェンの3社は30日、抗がん剤AMG706(一般名=モテサニブ)の非扁平上皮がんを対象とする国際共同臨床第3相試験「MONET1」について、主要評価項目として設定した全生存期間(OS)の有意な延長が認められなかったと発表した。
 同試験は、進行性非小細胞肺がん(NSCLC)における非扁平上皮がん患者1090人を対象に実施。パクリタキセルとカルボプラチン併用の下、モテサニブ投与群とプラセボ投与群の有効性と安全性を比較した。
 安全面については、モテサニブ投与群で重篤な有害事象の発現頻度がプラセボ投与群より多く認められたという。発現頻度が高かった有害事象は、高血圧や消化器症状、胆嚢炎・胆嚢腫大、疲労感、血液異常。
 今後の方向性について武田薬品は、「未定。今回は速報結果なので、詳細な解析結果を待って方針を決める」とした。
 モテサニブの開発をめぐっては、当初はNSCLCを対象にしていたが、独立データモニタリング委員会が2008年11月に行った安全性評価の結果、投与初期の死亡率が高かったとしてNSCLCのうち扁平上皮がん患者への投薬を中止。非扁平上皮がん患者に絞って同試験を実施していた。
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