ドラッグラグはなくならない?

治験が国際共同の時代となれば、審査・承認も国際共同の時代となるかというと、必ずしもそうはならない。その理由は企業の申請が必ずしも各国で同時ではないからだ。たとえ国際共同治験をやっても、三極同時に申請ということにはつながらない。

国際共同治験に日本が加わって、日本で治験をやって、PMDAが要求した以上の症例が組み込まれ、有効性・安全性が検証できたとしても、欧米では申請して、日本では申請しない可能性はいくらでもある。その理由としては、

1.日本人特有の安全性の問題が出現して、日本人でのリスク・ベネフィットバランスが他人種よりも明らかに見劣りする。
2.日本のマーケットが魅力的でない:薬価の問題や、市販後のコストの問題。

1が明確にデータとして示されている場合は、そもそも企業が申請しないだろうから、問題は表面化しないだろうが、そんな典型例はむしろ稀であって、ほとんどの場合には、グレーゾーンのもやもやした結果である。

そんな時、企業はせっかく治験をやったのだし、国際共同治験としては立派な成績なのだから、当然申請する。そんなデータをもらった規制当局はどういう態度を取るか?期待通りの結果が出たのだから、承認はするだろう。しかし、数十人の日本人データだけで、そのまま承認していいのだろうか?そんな不安が規制当局者の頭をよぎる。すると、自然に、製造販売後のモニタリングを手厚くして、治験前の日本人データの乏しさを補おうとする。

企業の方はたまらない。必死で国際共同治験をやり遂げて、承認を取れたとしても、全例調査などと言い渡された日には、商売上がったりだ。現場の医師からも営業からも轟々たる非難が浴びせられることは目に見えている。利益が出るかどうかも怪しくなってくる。そんな不安を口にすると、「だったら、日本で申請する必要はない」と天の声が聞こえてくるような・・・・

国際共同治験によって、ドラッグラグが解消したかどうかのアウトカム評価は、絶好の研究対象になる。各々方、準備はよろしいか?

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