生活指導利権
ー「未病ビジネス」はI o Tの草刈り場となり,爺医は排除されるー

欲張り村売薬利権診断利権については既に書いた。今回は(潜在的)生活指導利権について。参考→顕在化する“未病ビジネス”  薬価制度改革を背景に各社が模索

「潜在的」を括弧書きにしたのは,欲張り村の村長さん達が,ダイエットアプリについては,少なくとも今のところ,全く騒がないからだ。これはもちろん,『自分たちの生活指導はダイエットアプリなど足下にも及ばない高級な「患者教育」である』との誇りを持っていらっしゃるからなのだが,ダイエットアプリと医師の生活指導のどちらが有効かを検証した臨床試験をあなたはご存じだろうか。私は,(ちょっと調べる暇が無いこともあって)知らない。(誰か調べて教えて!)

では,AIが糖尿病患者に対する生活指導を行うアプリはどうだろうか?欲張り村は,どう反応するだろうか?そしてそれを制作したのが製薬企業だとしたら,やはりダイエットアプリ同様,「AIなんぞより,我々の方が上に決まっている」と高をくくって済ませるだろうか?それとも,『患者に健康被害を与える「未承認アプリ」を放置するとは言語道断!!』と,薬事・食品衛生審議会 (薬事分科会)で,「お叱りの声」が飛ぶのだろうか?

田辺三菱 デジタルメディスン第一弾 ゲーム感覚で糖尿病患者アプリの継続促す
田辺三菱製薬とヘルスケアベンチャーのハビタスケア(東京都港区)は2月12日、糖尿病患者向けの生活支援アプリ「TOMOCO」を開発したと発表した。人や動物のキャラクターがコンシェルジュとして登場し、ゲーム感覚で取り組める仕様になっているのが特徴。田辺三菱製薬によると、同アプリは同社が取り組む、医薬品とデジタルを融合した「デジタルメディスン」の第一弾として位置付ける。同社広報部は、「今後は他の領域や医師が処方するアプリなど、デジタルによる新たなソリューションを提供していきたい」とコメントしている。

それにしても「デジタルメディスン」とは,何ともまあ,挑発的な(そして誤解を招きやすい*)キャッチである。承認審査してくれってことなのだろうか?実際,ニコチン依存症治療アプリは治験が走っている(既に終わった?)。これは医療機関向けに販売することを前提にしているからなのだろうが,このTOMOCOさん(呼び捨てや「ちゃん」づけではハラスメントになりそう)の場合には,「19年度から実証実験を開始し、自治体や健康保険組合などから利用料を得る事業に育てたい考え」とのことだから,莫大な開発費用をかけずに「未承認アプリ」のまま,「AI健康器具」として販売する戦略なのだろう。

(*「デジタルメディスン」とは,本来,医薬品そのものに,飲み忘れ防止用のセンサーを付けたエビリファイのような製品の呼称なはず。対して「TOMOCO」はそのものが医薬品ではないのだから,ここは記事中にある通り,糖尿病患者向けの生活支援アプリとの呼称が適切だろう)

治験届けを出して開発して承認を目指すのか,それとも世に氾濫するダイエットアプリのように,未承認のまま自由価格で販売するのか,どちらの戦略を目指すのかは製造販売者の判断に任せるというのが,現時点での規制当局の姿勢なのだろうか?だとしても,4年も前にIMDRFが,この種のアプリに関するConcept Paper(らしきもの)出した割には各規制当局の動きが鈍いような気がするが,健康被害のリスクが医薬品よりも相当低いのだから,拙速で規制を決める必要はないというところなのだろうか。

そんな規制当局の動きとは全く関係なく,AIが人間に置き換わる動きはどんどん進む。「CureApp禁煙」にせよ,「TOMOCO」にせよ,欲張り村の先生方がAIに仕事が取られると怯えているのを見て,「ざまあ見やがれ」と面白がっている場合ではない。コールセンターをAIが支援する時代である。服薬指導利権も危うい。誰しも自分が可愛いものだ。前世紀の利権の上に胡座をかいている人間は,医師であろうと薬剤師であろうと,資格の種類,有無にかかわらず, もはや誰も助けてくれない時代となった。

参考
特定保健指導も「完全オンライン」の時代に 医師開発アプリとIoTデバイスによる生活習慣改善プログラム「mHealth(モバイルヘルス)」新サービスをキュア・アップがリリース
ascure STEPS(アスキュア ステップス)ティザーサイト

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