レギュラトリーサイエンスとは

いろいろな人が難しいことを言っていますが,そんなに多くの言葉や難しい言い回しは不要です.レギュラトリーサイエンスとは,規制の5W1Hを,問題意識を持って考えることです.その思考過程を明確に言語化すれば,それがそのまま論文になります.

もし,あなたが,「レギュラトリーサイエンスなんて単なる研究費獲得のための方便過ぎない」とか,「レギュラトリーサイエンスなんて科学じゃない.そんなもんで論文なんか書けない」と考えているとしたら,それは問題意識を持っていないからです.規制について思考停止に陥っているからです.

「未承認薬,適応外使用,ドラッグラグは,厚労省とPMDAに責任がある」,「薬害は厚労省に責任がある」.そういった考えは,幻覚妄想に基づく思考停止に他ならず,問題意識とは呼びません.そういう人にはレギュラトリーサイエンスは決して理解できません.

レギュラトリーサイエンスにおける独創性は物に依存しません.材料は全て公開されて誰でもが使えるものですから,独創性はそこから仕事を生み出す人に全面的に依存します.その点では建築学に似ています.

レギュラトリーサイエンスは天文学にも似ています。航海という実務活動には,星の運行を知り尽くしている必要があります.自分が海のどこに居るときに,どの星が,空のどこに見えて,どちらの方向に動いていくのか?その原理原則を知るために生まれたのが天文学です.天文学が生まれた背景はレギュラトリーサイエンスが生まれた背景とよく似ています.

薬機法という最低限の原則はあるものの,その実態はブラックボックスから生まれたとしか思えない人間の行動の結果が規制です.天体の運行原理がわからなかったのと同様,規制のアウトプットが所詮ブラックボックスに過ぎないと諦めてしまうと,「未承認薬,適応外使用,ドラッグラグは,厚労省とPMDAに責任がある」,「薬害は厚労省に責任がある」という幻覚妄想に基づく思考停止の袋小路に行き着くだけです.

それでハッピーな人も世の中にたくさんいますが,私はそうはなりたくない.なぜ,そのような規制が生まれ,何年か経ってその規制が変わっていく,あるいは新しい規制が生まれる。それはどのような背景を元に,どのような判断材料を元にして変わるのか?新しく生まれるのか?

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