米国薬価制度におけるリベートの役割

米国薬価制度におけるリベートの役割について明確に説明した日本語記事は記憶にありません。 貴重な記事と思います。日本の「ジャーナリスト」とやらも、記事を物にしようと本気で思うならば、こういう方向性で書かないと、これからは生き残れないでしょう。 この記事の中には新鮮な驚きがたくさんありました。

●リベートが米国の高薬価の原因になっていること
●(司法省反トラスト局や連邦取引委員会などではなく)FDA長官が薬価について公式の場で発言したこと。
● 医薬品が反キックバック法(反トラスト法の一部?)の 対象外 になっていること
●しかし、 医薬品を反キックバック法の対象とするのに新たな立法や大統領令は必要なく、規制の変更で対応できること→ひえーっ、課長通知みたいなもんなの??それで薬価制度がひっくり返っちゃうの??すげー国だなあ、アメリカって。

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米医薬品業界、トランプ氏の薬価改革に危機感 Financial Times 2018年5月7日
 トランプ米大統領が製薬会社の「人殺し」を止めるという公約の実行に動き始め、製薬・ヘルスケア企業は薬価引き下げのための新たな一連の規制に身構えている。
 医療費の高騰から患者を守るための政策立案を厚生長官や顧問に指示していたトランプ氏は、早ければ今週、薬価引き下げの計画を示す演説に臨む。

米国で薬価高騰への不満が高まる中、当局はリベートに厳しい目を向けている=ロイター
 演説について説明を受けた2人の関係筋によると、計画はまだ最終決定前で変更の可能性もあるが、検討されている中で最も急進的な提案は医薬品のリベート(割戻金)の実質的な禁止だという。
 政策として導入されれば、製薬業界は長期にわたる先行き不透明な状況に陥り、エクスプレス・スクリプツやCVSケアマーク、医療保険大手ユナイテッド・ヘルス傘下のオプタムなど、価格交渉を仲立ちする薬剤給付管理(PBM)会社の事業モデルに混乱が生じる恐れがある。
 製品に対する支払いを確保するために高額のリベートを支払っている一部の製薬会社も、交渉力が弱まることになりかねない。

リベートの形で値引き販売
 米国では製薬会社が薬価を高く設定した上で、いわゆる「支払者」の保険会社や雇用主、公的医療保険にリベートを支払う形で大幅な値引き販売をすることが多い。製薬会社はリベートと引き換えに、代金支払いの保証と幅広い患者へのアクセスを求める。
 だが、薬価の高騰をあおっているとの苦情が出るなか、政策立案当局はリベートに厳しい目を向けるようになっている。「支払者」側がより大きなリベートを求め、製薬会社は薬価の引き上げで利益を守っているからだ。米食品医薬品局(FDA)のゴットリーブ長官は先週の演説で、リベートを実質的に禁止する可能性に言及した。医薬品のリベートは、医薬品を反キックバック法の対象外とする米連邦法の規定によって保護されている。ゴットリーブ氏は、それを変える可能性を示唆した。「連邦政府が現行の医薬品リベートの保護を反キックバック法の下で見直すという形で、直接この制度に手を付けたらどうなるだろうか」と、同氏は問題提起した。
 提案について説明を受けた関係筋によると、そのような政策に新たな立法や大統領令は必要なく、規制の変更で対応できるという。
 リベートの禁止はこれまでの仕組みに大きな変化を引き起こすことになるが、製薬業界のロビイストらは悪夢のシナリオの回避にもっともな自信を示している。
 業界が最も恐れている施策は、薬価の上限設定、メディケア(高齢者向け公的医療保険)対象者のために政府が薬価を交渉できるようにすること、カナダなどから安価な医薬品を「再輸入」できないようにしている規制の緩和だ。
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