放射線治療の承認審査

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九電、九電工、久光 粒子線がん治療施設で新会社設立(佐賀新聞 2009/5/10)

 施設建設と管理 資金調達や機器購入も
 九州電力と九電工、久光製薬の三社は、鳥栖市に計画中の粒子線がん治療施設「九州最先端医療がんセンター(仮称)」を建設・管理するための特別目的会社(SPC)を設立した。2013年の開業を目指し、佐賀県などとともに150億円と見込まれる事業費を調達、施設建設や機器購入を手掛ける。

 社名は「九州重粒子線施設管理」で、4月28日に設立した。資本金は4500万円で、鳥栖市に本社を置き、社長には佐賀県が昨年11月に参与として採用した前福岡市副市長の山野宏氏が就任した。

 がんセンターは、九州新幹線新鳥栖駅近くに建設が計画されている。施設建設費や機器購入費など約150億円が必要で、県の補助金20億円、民間企業からの出資や寄付で80?100億円、金融機関からの融資で30?50億円を調達する計画。SPCは民間からの資金調達や、施設の設計や建設、完成後の管理を担い、がんセンターの運営は、今後設立される医療法人が担当する。

 SPC設立で、事業は佐賀県から民間主導に変わる。県は、福岡経済界に広いネットワークを持つ九州電力や九電工などともに出資者集めに携わる。粒子線治療は、がん細胞に炭素線をピンポイントで照射し、患部を切らずに治療する。新幹線駅に近い立地もあり、全九州的な利用が見込まれる。
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そういえば、放射線治療の承認審査って、どこがやっているのかと思ったら、PMDAの医療機器部がやっているのでした。恥ずかしながら知りませんでした。→審査報告書の例

でも、これは、あくまで、医療機器そのものの審査だ。だから、それをどう使うかという、使い方については、医薬品と同じ意味での臨床試験データは要求されない。つまり、上記の粒子線治療装置(炭素イオン/陽子タイプ)の審査報告書では、審査対象となっているのは、「放射線治療抵抗性固形がん」(*この言葉の定義も驚くほどあいまいで、文学的な表現に留まっている)30症例(頭頚部癌19例、肺癌3例、肝癌6例、骨軟部腫瘍2例)に対する、画像診断を有効性評価項目としたopen one armの試験1本だけだ。他の放射線治療と比較しているわけではなく、また、化学療法との併用についても、審査報告書を見る限り、全く記載はない。

*放射線治療抵抗性固形がん
1.組織型が腺癌、腺様嚢胞癌、などの非扁平上皮癌、肉腫、悪性黒色腫など
2.slow growing tumor
3.中心部壊死、乏血性腫瘍など、低酸素細胞の割合が多いと推定される腫瘍

以下、医薬品の承認審査をやっていた人間の素朴な疑問である。

○放射線治療の有効性、安全性の判断には、抗癌剤並みの臨床試験が必要なのではないだろうか?
○特に、医薬品の用法用量に相当する線量・治療計画なんて、医薬品の用量設定試験に相当するものが必要なのではないだろうか?
○治療対象となる悪性腫瘍でも、「放射線治療抵抗性固形がん」なんて文学的な表現に留まるものが、臨床試験と言えるのだろうか?
○少なくとも、conventionalな放射線治療と無作為割付をして、画像評価を盲検化するぐらいのことをすべきではないのか?実際に、診断薬の臨床試験では、そういう要求をしている。ましてや、重い副作用がある放射線治療なのだ。
○open one armで、組み入れ基準にも併用療法にも、化学療法の規定が全くないとすれば、有効性評価そのものが怪しくなるのではないか?

誤解しないでもらいたいのだが、私は、医療機器の承認に対する要求をもっと厳しくしろと言っているのではない。医療機器の場合には、こうやっています。有効性・安全性については、現場の責任でやってもらっています。規制当局は、ひどいいかさま物でなければ、うるさいことは言いません。そういう立場を堂々と説明すればよい。そういう、ゆるやかな規制があって、それでひどく不幸になる人がいなければ、それでもいいと思っている。私が指摘したいのは、むしろ、医薬品の審査が、なぜ、放射線治療の審査のように、「おおらか」になれないのか という点である。

「厚労省はけしからん」「審査が遅い」「審査をもっと慎重にやれ」と、何も知らないくせに知った風なことを言う連中に、「そんな偉そうなことを言うんだったら、お前ら、自分でやってみろ」と言わずに、「はい、申し訳ありません。もっと頑張ります」と日本人対象の用量設定試験を要求しては「FDAに比べてひどく保守的だ」と十年一日のごとくの非難を受け、その用量設定試験のデータを吟味するのに時間をかけては「何をもたもたしている」と十年一日のごとくの非難を受け、市販後、ごくまれな副作用が出る度に、「見逃した」「訴えてやる」と十年一日のごとくの非難を受ける。なぜ、そんな報われない作業を十年一日のごとく繰り返しているのか という点である。

追伸:久光製薬は、医療施設に出資するリスクをどのように考えているのだろうか?たとえば、九州最先端医療がんセンターでは、利益相反問題で、少なくとも、久光製薬は治験はできなくなる。他の製薬企業も嫌がるだろう。「治験ができないがんセンター」を作るつもりなのだろうか?以上の指摘が老婆心であることを願っている。もし、そんな心配は御無用と自信を持って言える方がいらしたら、教えてください。

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