訴訟に乱用される精神疾患
確定診断に至るバイオマーカーが存在しない・確立していない精神疾患は、常に医師の「胸先三寸」で診断が一人歩きする可能性がある。特にそれが裁判がらみになれば、ガイドラインも診断基準も何のその、「専門医たる俺様が診断基準だ」だとばかりに診断書を発行し、あまつさえ法廷でも「学会のガイドラインなんぞ、指南書に過ぎない。私のような崇高な専門医は、愚劣なcookbook-diaganosisには与しないものだ」と堂々と証言する御仁さえいらっしゃる。
実際に私は、拘置所内の観察により、客観的に不眠が観察されないためにベンゾジアゼピンを中止したところ、「私に断りもなくベンゾジアゼピンを中止されたのでPTSDになった」との主張で国家賠償訴訟に至った事例に対し意見書を書いた経験がある。この事例では、原告は刑務所で受けた不適切な診療によりPTSDとなった旨の診断書が精神科医から提出されたが、訟務検事が率いる被告国の訟務担当チームが(いつものことなのだが)協力医が見つからず、このままでは負けるとのことで、私に意見書書きのお鉢が回ってきた。原告から提出された診断書と診療録を検討したところ、PTSDの診断過程は診断基準で定められた手順を一切無視していたので、その旨を指摘した反論意見書を提出したところ、一審二審とも順当に原告の請求は棄却された。私はいつでも喜んで法廷で証言する=原告からの反対尋問を受ける用意があったが、肝心の原告側医師が出て来なかったので、私の証言も実現しなかった。
下記の記事によると、
1審では原告の請求が認められている。おそらく医師がPTSDの診断書を出したのだろう。
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「秋祭りで怒られPTSD」女児の逆転敗訴確定 2018/9/27(木) 19:19配信 産経新聞
埼玉県深谷市が管理する施設で開かれた秋祭りでボランティアに怒られ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとして、女児(9)が市に約190万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(戸倉三郎裁判長)は、女児の上告を受理しない決定をした。女児の逆転敗訴とした2審東京高裁判決が確定した。決定は25日付。4裁判官全員一致の結論。
判決によると、女児は5歳だった平成26年11月、家族とともに市内の施設で行われた秋祭りに参加。女児が輪投げゲームの会場に置かれた袋から景品の駄菓子を取り出したところ、ボランティアの高齢男性から注意された。近くにいた父親が駆けつけ、謝罪を求めて男性と口論。その後、女児はPTSDと診断された。
1審東京地裁判決は「男性に大声で注意され、口論を見たためにPTSDを発症した」として男性の過失を認め、使用者責任に基づいて市に約20万円の支払いを命じた。
一方、2審は「景品の駄菓子を勝手に取ろうとした女児を注意したのは社会通念上、全く正当」と指摘。「親として謝罪すべきなのに、道理に反して男性に謝罪を求め、警察に通報するなどした」とし、女児の請求を退けた。
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→法的リテラシー