介入研究ばかりが臨床研究じゃないってことで,今回は観察研究に関する話題を。
観察研究結果に影響する交絡因子の影響を調整する方法として傾向スコアpropensity scoreによる補正という集団があるのを,先日初めて知りました.皆さん,ご存じでしたか?なかなか有用な道具で,たくさん の論文で使われているのに,いままで気付かなかったのは,観察研究の方法論ということで,視野に入らなかったからでしょうか.いずれにせよ,ちょっと勉強 した結果をまとめてみました.何しろ初めて勉強したので,おかしなところがあったら教えてください.
例えば、タバコを吸っている人と吸っていない人の10年後のガンの発病率を比較する場合に、2つのグループのガンの発病率を単純に比較しても意味がないん ですね。実は喫煙する人としない人では、そもそもいろいろな点が違っています。喫煙する人は酒を飲みやすい、ストレスがあるなど背景が違いますから、単純 に2つのグループを比較しても他の要因によってガンが発病しているかもしれないわけです。そういった喫煙群と非喫煙群の2つのグループの違いをなくして、 「喫煙がガンの発病に、それ単独でどれくらい寄与しているか」を比べられたら、これが本当の発病率の比較になります。そういうものを推定するための方法と して傾向スコアが考え出されたんですね。従 来型の交絡因子調整法である,共分散分析と異なる点は,複数の交絡因子を一つの編集に集約することによって,その一変数でのマッチングや層別を行うとのこ とです.一変数にまとめることによって,各変数によっていろいろなモデルの仮定を設けずに済むので,交絡因子の影響を効率的に排除し,注目する因果関係の 影響を選択的に見ている可能性を高めることができるというのです.
ネットで検索すると,膨大な情報があります.ちょっと検索しただけでも,日本でもすでに2001年の時点で傾向スコアを使った学会発表がなされているのですね.こんなことも知りませんでした.
ACE阻害薬に腎機能障害の抑制作用あり、「傾向スコア分析」で示唆
誰にでも手に入るわかりやすい総説として下記があります.
星野崇宏,岡田謙介.傾向スコアを用いた共変量調整による因果効果の推定と臨床医学・疫学・薬学・公衆衛生分野での応用について.保健医療科学 2006;55:230-243