アス
ピリンによる一次予防
その有効性は日本人でも証明できませんでした。主要評価指標は心血管イベントの複合エンドポイントです。
http://www.acpinternist.org/weekly/archives/2014/11/25/index.html#1
Low-Dose
Aspirin for Primary Prevention of Cardiovascular Events in
Japanese Patients 60 Years or Older With Atherosclerotic Risk
Factors. A Randomized Clinical Trial(無料で誰でも全文読めます)
リスクのより高い白人集団でも有効性が証明されていないのに、日本人で、できるわけがないだろうって?まあまあ、そう言わずに。2005年3月か
ら初めて10年近くかかってここまで漕ぎ着けたんですから、立派なものですよ。それにそう言うあなたも、「日本人でのエビデンス云々」って、いつ
ぞや言っていませんでしたっけ?まずは結果をご覧ください。
以下結果
●主要評価指標のハザード比は0.97(95%信頼区間 0.77-1.15, p=0.54)
●有効性副次評価9項目のうち、プラセボに対し辛うじて有意な有効性を示したのは非致死性心筋梗塞だけ。ハザード比は0.53(95%信頼区間
0.31-0.91,
p=0.02)。そんでもってNNTを計算したところ、404!当然予想された数字ではありますが・・・トホホ(;´Д`)
●一方、重篤な頭蓋外出血のハザード比は、しっかり1.85(95%信頼区間 1.22-2.81,
p=0.004) NNHを計算したところ 257!
●もちろんNNH:NNT
ratioは1を割り込んで0.64。再びトホホ(;´Д`)
The
NNH:NNT ratio is an important indicator of risk:benefit from
interventions and should be greater than 1.
●致死的な頭蓋内出血は両群で差はありませんでしたが(アスピリン5 vs プラセボ5)、非致死的な脳内出血は(アスピリン23 vs
プラセボ10)、非致死的なくも膜下出血は(アスピリン8
vs プラセボ4)でした。非致死的脳内出血と非致死的くも膜下出血を併せて非致死的頭蓋内出血とするとアスピリン31 vs プラセボ
14です。カイ二乗検定でp=0.01となりしっかり有意差が出ます。見え透いた副作用隠しと受け取られても反論できないデータ操作です・・・・ため息
(-。- )
この試験は重要なことを再認識させて・教えてくれます。
●もともとアスピリンには一次予防の効能効果は認められていないこと。これは世界共通。
●ましてやそれよりも後発組で、かつ、より薬価の高いジピリダモール、クロピドグレル、プラスグレルといった類薬にも一次予防の有効性は認められ
ていないこと
●だから、「脳梗塞が心配です」というだけで、実際にこれまで卒中発作のない人のMRIを撮影して虚血病変が疑われても、アスピリンも類薬も投与
してはならないこと。
●もし投与すれば患者を出血を始めとした副作用リスクに晒すだけ。その極めて頑健なエ
ビデンスが得られたこと。なお、適応外使用は医薬品副作用被 害救済制度の対象にはなりません。
蛇足:著者とその並びが、”おもしろうてやがて悲しき”(^^;)。この分野では「爺どもは引っ込んでろ」って言える若い人がいなかったのか、言
わせなかったのか・・・いずれにせよ、そういう若い人を
筆頭著者に立てられなかった爺様達は若い人を育てられずに恥ずかしいと思うべきなのですが、まあ、無理でしょうね(^^;)。
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