市販後安全性検証の難しさ

登録された市販後試験でさえ、無駄なのですから、まして況んやanecdotalな報道・みのもんた流のどんちゃん騒ぎをや。
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市販後試験で薬の安全性監視は改善せず〜稀な有害事象はたいてい検出不可能 BioTodayニュースレター 2017年2月9日
ドイツに登録された市販後試験計画を解析したところ、被験者数はたいてい少なすぎて稀な副作用(1000あたり1件未満)の検出は不可能であり、薬の安全性監
視を改善する主要な方法とはいえず、患者のためにもならず、より効果的な医薬品安全性監視に費やされるべき資源を奪っている恐れがあります。
著者によると、市販後試験の開始に際してその試験を届け出ることを法律で定めている国はドイツ以外にありません。
Contribution of industry funded post-marketing studies to drug safety: survey of notifications submitted to regulatory agencies. BMJ 2017;356:j337
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市販後調査にお金をかけるくらいなら薬代を安くしてもらいたい(解説:折笠 秀樹 氏)−臨床研究適正評価教育機構  2017/02/27
富山大学大学院医学薬学研究部バイオ統計学・ 臨床疫学 教授 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

市販後調査が安全性向上につながらない!?/BMJ(2017/02/16掲載)
 ドイツでの新薬の市販後調査(PMS)558研究を対象にした、2008〜10年まで3年間の調査結果である。医師へ支払われた謝金は、中央値として患者1人当たり2万4,000円であった。558研究にかけられた総費用は260億円だから、1研究当たり平均4,700万円かかっていた。これだけのお金をかけて成果はほぼゼロ。新規の副作用は発見されなかったし、研究結果を論文にしたのはわずか1%。しかも、こうした研究データは何ひとつパブリックドメインになっていない。260億円ものお金を市販後調査に費やすなら、薬価を安くするなど、患者さんに還元してもらいたい。
 日本でも市販後調査(現在では製造販売後調査という)への疑念が5年以上続いている。日本臨床薬理学会では毎年のように議論されているが、制度はあまり変わっていないのが現状である。それは市販後安全監視活動の一環としてなされており、その目的としてまれな副作用を発見するとか、一定の精度で副作用を評価するなどと書かれている。後者はある程度の成果があるだろうが、前者については日本でも成果ゼロといわざるを得ない。
 ドイツでは市販後調査は届け出ることになっているので、このような調査が可能であった。一方、アメリカでは市販後臨床試験などしか届け出る必要はないので、こうした調査は不可能である。日本では承認審査の際に市販後調査・リスク管理計画を提出させるので、こうした調査は可能である。でも、追試は不要だろう。同じ結果が得られるのは目にみえているからだ。
 最後に、スポンサリングとファンディングの違いについてみてみよう。今回の研究対象として、企業ファンディング(Industry
funded)の市販後調査となっていた。しかしながら、企業スポンサリング(Industry
sponsored)と記述すべきだったと思う。ファンディングとは企業は資金を提供するだけで、調査自体は研究者主導で行う。スポンサリングではお金も出すが、口まで出すことになる。研究者がコアメンバーに選ばれることはあっても、企業が研究計画に意見するし、実施についても企業が法的責任を持ち、データ解析まで企業で行う。論文化についても企業が主導権を持つ。論文化されたのが1%(つまり6報)ということからも、企業スポンサリングだと思った。研究者主導だと論文化する割合がこんなに低いわけがないからだ。

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