国内第三相がない?

レフルノミドという慢性関節リウマチの薬が,国内で第三相試験が実施されていないと聞いて不思議に思った友人からの質問に答えて:

ご指摘の通り,レフルノミドは国内で第三相試験が行われていません.しかし,これは違法でも抜け道でも何でもなく,正々堂々と審査を通ったものです.ご存知とは思いますが,ICH-5と呼ばれる国際ルールに従って,外国での臨床試験のデータの一部を日本での申請に使えることになっています.レフルノミドの場合,第三相試験は外国の試験データを使ったのです.ただしその場合でも,民族差などをクリアすることが条件になっています.

日米EU医薬品規制整合化国際会議(ICH) -- International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use (ICH)は医薬品の承認申請に関わる科学的データの作成について、日米欧の共通ガイドラインを作成することを目的とするプロジェクトです。

ICHガイドラインの詳細

これは日米欧がそれぞれ対等な立場に立つルールですから,日本の臨床試験のデータを海外で使ってもらってもいいのですが,試験の質を見ると,とてもそんなことはできず,現実は輸入一辺倒です.

なお,新薬の審査報告書は公開されています.レフルノミド,類薬インフリキシマブ

レフルノミドは国内で第三相試験をやっていないからイカサマではないかという風評がまことしやかに流れるのは,ICHのシステムや新薬の審査について,臨床医が何も知らないからでしょう.このような臨床研究の基本ルールを多くの臨床医が知らないことが,日本の臨床研究の大きな弱点になっています.このような我々の無知は,日本の臨床研究がいつまでたっても貧しいままに留まっている大きな原因になっています.

ICHにより日本の治験が空洞化するなんて的外れな批判から脱却して,日本で真っ当な臨床研究をやって,そのデータを海外で使ってもらう,そういう気概を持った臨床医がどんどん育っていくようにしたいと思っています.

ちなみに,レフルノミドについては,世界各国の市販後調査において,致死的転帰の症例等のまれで重篤な肝障害が,本薬の治療中に報告されました。ほとんどの症例は治療開始後6ヶ月以内に生じ,肝毒性に対する複数のリスクファクターの背景があったことが明らかになっています.。詳細は→【 米FDA 】 Medwatch Important Prescribing Information:[‘Arava’](leflunomide)(通知日2003.10,web掲載日2003.11.20)

これらの情報についても,日本国内の市販後調査に反映されます.

日本の臨床試験を育てる