パセリの味見役

下記は2008/2/28付けのThe Pink Sheet Dailyから

Pfizer minimizes presence in Japan's drug R&D market
Pfizer is pulling drug research efforts from Japan to avoid regulatory delays and surging costs of clinical studies, opting to increase development spending in South Korea instead. "Japan is an extremely large market, but there is no growth," an official at Pfizer's Tokyo unit said Wednesday. -Bloomberg (2/28)

「マーケットそのものの大きさは確かに世界で二番目かもしれない。しかし、国民皆保険制度の下で、薬価が厳重な統制下にある上に、将来性も全く見込めない。そんな社会主義体制下での新薬開発という、未曾有の課題に、我々はこれまで五十年以上にわたり果敢に挑んできた.これは敗北ではない.名誉ある撤退である.」

世界最大の製薬会社日本法人社長室から、そんな演説が聞こえてくるようだ.

もう、背に腹は替えられないのだ。わが国は、世界でトップクラスの医療費抑制を誇るだけでなく、他のOECD諸国が軒並み3%ー7%の薬剤費伸びを示す中で、0.8%という驚異的な薬剤費抑制に成功している。→OECD Health Dataより

本当は、日本でなんか商売したくない製薬企業にとって、日本での承認申請は「おつき合い」だった。でも、それを言うと、規制当局の顔を潰すことになるから、「御願いですから、承認を早くして下さい」(=規制当局を頼りにしています)って、外交辞令を言い続けてきた。

でも、パイプラインの中身はなくなるは、虎の子のブロックバスター候補は土壇場で潰れるはで、日本で治験をするような悠長なことはできなくなった。日本で商売ができないのなら、日本の承認も要らない。だから日本での開発・治験もやらない。そう言わざるを得ない状況になってきた。

ブリッジングという、苦肉の策の時期も含めて、以前は、独自の規制により、独自の臨床試験を要求していたゆえに、それなりに治験が行われていた。しかし、世界は一家、人類は皆兄弟をモットーに国際共同治験を推進するようになった。すると,これ幸いと,治験コストの高さを嫌って,某社会主義国以外の東アジア地域に治験が逃げ出した。つまり、国際共同治験の推進が、治験の空洞化を推進する皮肉な結果となった。

そうなると,一番苦しいのは,日本での承認なんて、別に欲しくない。そういう気持ちを隠さない本社と、独自の規制を要求するPMDAの板挟みになる方々だ.そして,その次に苦しくなるのは,刺身パックのパセリよろしく申し訳程度に入っている自国民データを吟味しなければならない規制当局だ.そう考えると,治験相談の場でも、一層相手を思いやることができるのでは?

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