国家という名の合法的な無法者
ワクチン全権委任法
戦後、ヒトラーを「怪物」と呼ぶことで自らの責任から逃げたユンゲや
シュペーア、その他の側近たちだけを責めても、問題は解決しません。問題は、戦争がないという意味で当時よりは幸運な時代に生まれた者が、そこから何を考
えるかということ。ユンゲらの責任逃れの論理も注目に値しますが、何よりも重要なのは、人間がこんなにも、愚かになれるということです。(藤肥孝幸 映画「ヒトラー~最後の12日間~」 2017/12/27)→その実例
1933年2月 ベルリン
ゲーリングは「これじゃ裁かれているのは共産主義者じゃなくて、われわれだと思うだろう」と嘆いた。これにヒトラーは「ゲーリング君、これは時間の問題だよ。もうすぐ連中に我々の言葉をしゃべらせてやるさ。連中はみな退職間近だし、後釜には我々の息のかかった人間を据えることにしよう。しかし老紳士(ヒンデンブルク)が生きているうちは、われわれとしてもどうしようもない。」と語ったという(ウィキペディア(Wikipedia)ドイツ国会議事堂放火事件 引用元はErnst Hanfstaengl. Hitler: The Memoir of a Nazi Insider Who Turned Against the Fuehrer. Arcade.2020)
1933年2月27日の国会議事堂放火事件はあくまで単独犯行で、ドイツ共産党とは何の関係もありませんでした。それはプロイセン警察も知っていたし、さらに裁判所が単独犯行と認め、ルッベ以外の被告4名はすべて無罪でした。彼は本当に全権委任法を必要としていたのでしょうか?「朕は国家なり」と一言言えば済むことだったのではないでしょうか?それとも逆に「朕は国家なり」と言うために全権委任法を必要としていたのでしょうか?
だとしたらそれは彼が権力者として素人だった何よりの証拠です。ちょび髭生やした劣等感むき出しの絵描きくずれが、わざわざ博物館の壁を壊して引っ張り出した客車の中で仇を討ったつもりになっていただけです(休戦の客車)。あの時に、
太陽王の足下にも及ばない、ただ感情だけで行動する野良犬だってことが世界中にばれちゃった。以後は英国、ボルシェヴィキに連敗して地下壕の引きこもり。
放火から1ヶ月後の1933年3月23日に、全焼した国会議事堂に代えて臨時国会議事堂となったクロルオーパー(クロルオペラ劇場)で成立した全権委任法を、見合わせる選択肢もあったのです。何しろ国家そのものが元来「法に守られた無法者」なのですから。もしも全権委任法なかりせば、適当な時に政界から退いて天寿を全うできたでしょうに。それなのに、全権委任法が成立してしまったばっかりに、宿敵ロシア人に頭蓋骨を持ち去られ、口の中まで覗かれて、その結果が自分が蹂躙したブリュッセルに本拠を置く欧州内科学会の機関誌に掲載され(Hitler's Teeth Reveal Nazi Dictator's Cause of Death)、死後70年以上経ってから自分の死因が改めて世界中に公開される羽目になっちゃった。
「結果論だ」なんて一蹴できやしないでしょ。地獄に落ちたままのあなたの立場で。全権委任法なんて、やっぱり要らなかった、成立させるべきじゃなかったんですよ。第一帝国よりもさらに古い、三千年の歴史を誇る東洋の大国でも、それは同じ事だと思うのですがね。
2002年4月 上越
●労働安全衛生法第十三条 (産業医等) 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
●労働安全衛生法施行令 第五条(産業医を選任すべき事業場) 法第十三条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。
●人事院規則一〇―四(職員の保健及び安全保持) 第九条(健康管理医) 各省各庁の長は、第五条第一項の組織区分ごとに、健康管理医を置かなければならない。 2 健康管理医は、医師である職員(当該健康管理医を指名しようとする組織区分に係る各省各庁の長及び当該組織区分の長を除く。)のうちから指名し、又は医師である者に委嘱するものとする。
もう、20年も前のことになります。2004年の独法化を2年後に控え、私が勤めていた上越にある国立病院でも診療、人事、病院管理と、あらゆる面で様々な変化が起き始めていました。そんなある日のことです。総務課長から「健康管理医」の依頼が来たのです。何でも前任者が異動したためとのこと。その時既に医学部卒業後20年経っており、健康管理医という呼称も、ひどく一般的な名称のように聞こえたのですが、一体どういう立場で何をするのか明確な記憶がないので、実際の職務内容を尋ねてみたところ、健康診断結果のチェックとの回答が返ってきました。
当時でも 精神科3、認知症1、重度心身障害者2、神経内科1と、7つの病棟とそれに対応する外来診療を行っていた病院です。常勤職員が50人で収まるわけがありません。「それって、産業医の仕事ですよね?でも、前任の方は産業医の資格をお持ちだったのでしょうか?私は持っていないのですが・・・」
総務課長は鳩が豆鉄砲を喰らったような表情でした。産業医。国家公務員一筋だったであろう彼にとって、「産業医」とはおそらく生まれて初めて聞く言葉だった、今でこそ、そう思いますが、当時は彼の表情の背景を全く読み取れませんでした。
「常勤職員が50人以上いるところは、たしか法令で産業医を置かなければならないはずですが・・・・」
「そうですか・・・・調べてみます」
それが彼の精一杯の回答でした。でも結果的に彼の調査も回答も必要ありませんでした。一体全体どこがどうなっているんだろうと思った私が、厚労省の先輩に電話をかけて明快この上ない回答が得られたからです。
「結局さあ、お上(かみ)は間違いをしないっていう大前提があるんだよね。だから常にお上は平民を取り締まる立場にいられる。お上でも間違うことがある。そんなふうに堂々と認めちゃったら、平民を取り締まれなくなるでしょ。これって法治国家(の建前)が崩壊するってことになるじゃない。だからお上の無謬性は何としても守らなくちゃならない。そのためには平民だけが取り締まりの対象になり、お上自身は常に上に立って取り締る側に留まり続ける必要がある。だから民間の事業所にだけ産業医を義務づけて、職員が何百人いようが何千人いようが、それが役所であれば産業医の講習なんか一度も受けたことがない医者でもオッケー。人事院規則でそういうふうに決めちゃたんだよ。あくまで規則であって法律じゃないから、健康管理医の不在期間が半年ぐらいになっても、慌てて泥縄で選任したお医者さんに検診データを渡せばいいだけだ。そうすれば懲戒処分の対象にもならない。そういうふうにできているんだよ(*)」(*単行本は1995年9月、文庫本は1999年6月)
2022年2月 霞ヶ関 ワクチン全権委任法
「臨床試験以外のもの」としか言ってません。そして更に「としても良い等」と、毎度おなじみ「等」の大廉売(それにしても名詞の後限定だと思っていたのですが、霞ヶ関用語では違うのか?)。わかりやすく言うと、承認申請資料の中に高松市のスーパームーミー花園店(私の住まいから歩いて15分)のチラシの束が入っていても、怒るなんてもってのほか。せいぜい「こんなものが入っていましたけど」という丁寧な手紙とともに返送されてくるのが関の山(申請資料として送られてきたものだから勝手にシュレッダーにかけたり焼却処分にしちゃだめですよ)。もしかしたら、期限切れのチキンパスタサラダ and/or 牛乳の喫食等を含め、ワクチン接種下での食生活状況の把握のための資料として読み込むかもしれない ってことです。これが特例承認という名のワクチン全権委任法下での「承認審査」です。普通の医薬品承認審査と同じだと思ったら大間違いです。
「何を騒いでやがるワクチンヘイトどもが。陰謀論が信用されなくなったから、次は正式な手続きを経た有効期限延長に難癖をつけてきたというわけか。お前達クレーマーががどんな言い掛かりをつけようと、我々は国民の皆様によって選ばれた政治家の先生方が国会で決めた薬機法に則って粛々と接種を進めるだけだ。我々がやっていることは全て正しい。それが何より証拠には、いつも鋭い指摘で我々をご指導くださる専門家の先生方も、そして普段はあれほど我々に厳しく当たる日医の先生方も、正式な手続きを経て有効期限が延長されたワクチンに対して、何の異議も唱えていらっしゃらない。何、裁判だと?上等だ。やれるもんならやってみろ。当然我々が勝つ。なぜならば我々は法令を遵守し、粛々と接種を進めただけだからだ。何一つ間違ったことをしていないからだ」
医薬品医療機器等法に基づく新型コロナウイルスワクチンの特例承認について
(参考)特例承認とは
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14 条の3第1項の規定に基づき、
1.疾病のまん延防止等のために緊急の使用が必要、
2.当該医薬品の使用以外に適切な方法がない、
3.海外で販売等が認められている、
という要件を満たす医薬品について、承認申請資料のうち臨床試験以外のものを承認後の提出としても良い等として、特例的な承認をする制度です。
お詫び:すいません。記事のうち本論が1/5,本論と関係のない前置きが4/5の構成になってしまって。
→期限切れワクチンの活用法
→法的リテラシー
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