Japan unveils 5-year plan to boost clinical researchと題してランセットが日本の治験活性化とPMDAの人員増について特集を組んでいる(Lancet 2007;369:1333) .おお,ランセットまで注目してくれているのか,これは責任重大だと,意気軒昂となった方もたくさんいらっしゃると思うが,4ページにもわたる英文を読む読解力も時間もない私のような少数派の方には,後ろの”オチ”だけ読むことをお勧めする.
最後の段落には,Mild Optimismとタイトルがついている.ランセットを読みなれている方には,Mild Optimismの対極にあるものがこの段落に書いてあると直感すべきである.下記はその段落からの抜粋.
Outside policymaking circles, the government’s latest plan to boost clinical trials has been greeted with mild optimism and open disdain.
open disdainとは,また気取った言い方だ.”醒めた見方を隠そうとしない”ってな感じだろうか
Observers point out that the government will find it difficult to create proper testing sites as long as there is a shortage of trial nurses and clinical research coordinators in a country where clinical trial work is still regarded as a bad career option.
日本では,臨床試験が,医者の小遣い稼ぎの仕事としてしか認められていない現状と,リサーチナースやCRCの人材不足といった根本的な問題が一朝一夕には解決しないだろうという点をしっかり見抜かれているじゃないか.
“The increase in regulatory staffis an important development, but they’re only just starting to recruit those extra personnel, who will require a lot of training and experience, so the impact won’t be felt for at least another 5 years”, the PhRMA’s Wolf says.
人員増の成果が出るには5年もかかるって認めてくれているPhRMAって,PMDAの力強い味方ですねえ.製薬協の面々に爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい(未承認だけど・・・)って思っていませんか?PMDAの幹部の方々.
“I fear the money being thrown at core hospitals will just disappear”, said Forrest of Wyeth pharmaceuticals in Japan.
just disappearだって.よくわかってるじゃん!それでも日本で治験をやらねばならない,この辛さ!
The government’s response is to throw money at institutions but I’m not sure that is the answer. They can improve sites when the industry works with them. But not if Japanese fi rms continue to go overseas fi rst.
ここは非常に重要な指摘だ.日本の治験環境の劣悪さを嫌って,今でも治験がどんどん国外に逃げていく環境を,お上が税金を投入しただけで改善できるとは思えないというのだ.
医薬産業政策研究所が発行している政策研ニュース2007年3月号の記事、”一段と進む日本企業による新薬開発の海外シフト”には、なおも開発がどんどん外国に出て行く流れが克明に描かれている。そんな時代の流れの中で、官主導で、”治験が活性化”していくと信じられるのは、現実を見たがらないごく一部の人達だけだろう。治験を行う企業は、コストの高い国内治験に対しては国が補助金を出してくれるから、余力で海外の試験をもっと進めようと考えるに違いない。かくして、治験空洞化はますます進むだろう。
だから、ランセットのこの記事を読んで元気が出るって方がおかしい.だから,元気になれる人は,この記事をきっと読んでいないのだろう.