PMDA不要論
−YOP,内資,外資それぞれの立場−

「宿敵」が消えるとしたら,薬害オンブズパーソン会議YOPもその使命を終えることになる.だとすれば,内資のリーダーが提唱するアジア版EMAという生き残り策をYOPも支持するのだろうか?(RS財団理事長が「YOPなんか要らない」という立場だとか,内資の敵で外資の味方だと言っているわけではないことは念のためお断りしておく)
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国際的な承認審査の統一は実現するか 医薬経済2019/3/15 医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団理事長土井脩
これまで日米欧で形成していたICH(医薬品規制調和国際会議)は、国際的な組織に生まれ変わった。ICHが誕生した90年頃、日本は世界の医薬品市場の25%近くを占めていたが、この30年間で10%を切るまでに低下し、グローバル製薬企業の日本に対する関心は年々下がってきている。
さらに、新薬の価格は自由で右肩上がり、新薬開発企業にとっては「夢」のような国だった米国までが、価格規制を強めてきた。新薬開発の原資は高額で販売できる米国で特許期間中にしっかり確保し、日本や欧州各国、新興国は、米国が開発した新薬の恩恵に浴するという国際的なビジネスモデルも次第に厳しくなりつつある。日本でも、医療費抑制策の強化の下、薬価に対する締め付けが年々厳しくなってきている。日本の製薬企業も、国内だけでは市場が小さくて成り立たなくなっており、欧米に進出する企業が増えてきている。

PMDAの将来不安
医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、その規模を年々膨らませている。しかし、巨大化した組織を長期的に維持するためには、さらに収入源を確保しなければならないという、悪循環に陥りつつあることさえ懸念される状態だ。
PMDAを維持するための財源の大部分は、製薬企業からの承認審査手数料や各種相談手数料、安全対策拠出金などに頼っている。日本の医薬品業界の縮小傾向は、即、PMDAの将来構想を根本から崩しかねない。現在在籍する多数の職員を将来にわたって養うことができるのか、さらに製薬業界にそのような余力があるのか、不安材料は多い。
海外の製薬企業としても、医薬品市場の縮小につれて、日本独特の細かな医薬品規制にいちいち対応するよりは、アジアや中国というより大きな枠組みのなかで日本のことを考える方向が年々強くなってきているようである。
医療費抑制という難題に直面しているのは日本だけではない。00年代に入り、各国の医療財政は厳しさを増し、いかに医療費を、とくに薬剤費を抑え込むかにどの国も知恵を絞っている。HTA(医療技術評価)の導入目的も、最終目標は医療費抑制であり、薬剤価格の決定や医療保険における採否のプロセスを如何に合理化するかにある。
第2次世界大戦後、世界をリードし、限りなく豊かに見えていた米国も例外ではない。ドナルド・トランプ大統領の誕生とともに、それが虚像であったこと、世界のリーダーとしての余裕がなくなったことを自ら明らかにした。世界をリードする新薬の開発よりは、新薬の薬価の抑え込みが政府の関心事となっている。
新薬の承認審査の段階で、市販後の安全性の予測までも含めた膨大な臨床試験データを要求していたFDA(米国食品医薬品局)だが、近年は、このようなやり方から、開発から市販後までの一貫したライフサイクルマネジメントを基本とした評価に切り替えた。これは、日本がICHの場で提案して実現したやり方だ。最近はさらに、承認審査段階のハードルをより合理的に下げる試みさえ行っている。
これらの試みを通じて、患者の新薬へのアクセスを改善するが、当然のこととして、リスクは高まることになる。市販後の安全対策や、グローバルな連携が重要となってくるが、その際、日本のような「市販後の安全対策は我が道を行く」やり方では、グローバルな連携から取り残されてしまう。
医療費削減のためには、いかにして新薬開発や承認審査、市販後安全対策などに必要な費用を抑え込むかが大きな課題だ。承認申請資料の要求内容をより合理的にしたり、承認審査や市販後安全対策に関する要求内容を各国で共通化するなど、条件付き承認のようなやり方で、市販後の安全性を確保することが重要となる。
しかし、承認のための理不尽な条件を増やせば製薬企業にとっては大きな負担となる。承認審査や安全対策で、各国が別々の要求を出し、製薬企業がそれに対応する現在のやり方は無駄が多い。効率化して、グローバルに一本化できないか、との要求は当然だ。
将来ICHがめざすべき方向は、3極(国際)共同審査の実現である。実は、3極における新薬承認審査結果の相互受入れに関して、90年にICHがスタートした時から、業界からは、ICHの最終目標は各種ガイドラインの調和で終わることなく、審査結果を3極の医薬品規制当局が相互に受け入れることだとの意見が出ていた。
当時は、欧州の新薬承認審査が統一される前で、日米欧の規制当局は、まずはガイドラインなどの調和から始めようとなった。それは、承認審査は国家の主権が絡む話なので、業界が参加するICHのような場での話し合いには馴染まないとされたためだ。ICHの将来目標として、3極医薬品規制当局間での審査結果の相互受け入れを掲げることは実現しなかった。
しかしながら95年、EUにはEMEA(現EMA=欧州医薬品庁)という統一的な審査機構が設立され、次第に体制を強化、中央審査方式が定着して現在に至っている。日本の現状からは想像することさえ困難だが、さまざまな人種や民族が住んでいる欧州で、20ヵ国以上が、各国の独自の主張をある程度譲って、統一的な審査結果を受け入れている。今後の世界の審査の共通化を考えるうえで非常に勇気付けられる話だ。

英国のEU離脱で新展開も
3月には、EU(EMA)で新薬承認審査等の中心的な役割を担ってきた英国が離脱するが、EMAにおける新薬の承認審査が今後どのようになるのかは、まだ見えてこない。しかし、従来からFDAとEMAは、治験相談のような段階では相互協力・相互情報交換が行っており、承認審査についても、すでに、接近しつつあるようだ。
承認審査の全面的な統一は遠い将来のこととしても、多くの面での共通化などが試みられる可能性がある。英国がEUから離れることにより、米国と英国、EUによる新しい枠組みが実現する可能性は高いと言えるだろう。
国際的に、新薬開発や承認審査、そして市販後安全対策の効率化がグローバルなレベルで進んでいくなかで、日本は今後とも「日本人は別だ」との信念・信仰を貫くのかどうかは、PMDAの将来を占う上で重要な点だ。組織防衛が絡むこのような問題を、PMDAや厚生労働省だけで決めることには利益相反の面からも疑問がある
現在、ICHでは、GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)や、E17(国際共同治験の計画及びデザインに関する一般原則)ガイドラインなどが議論され、一部は実装化されつつある。これによってグローバル開発の負荷を大きく減らすことができる。
日米欧の3極は現状、新薬審査をそれぞれで行っているが、なぜ3度も繰り返す必要があるのか。3極のなかで、新薬審査の順番が遅いことが多い日本は、審査結果の共有や統一審査の恩恵を最も浴することができる国であり、真摯な議論が待たれるところである。
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