なぜ,なぜ,なぜ

2008年3月20日,沖縄で行なわれた琉球大学・慈恵医大合同フォーラム:地域医療と臨床研究で,なぜ,地域医療なのか?なぜ,臨床研究なのか?なぜ,質的研究なのか?なぜ,英語で論文を発表するのか?その全ての疑問は,次の記事を読むことによって氷解する.

2007年4月にNHKBSで放映された番組「沸騰するインド医療ビジネス 世界が担う巨大市場と最先端治療システム」(2008/4現在映像もあり)でインドの医療観光産業(Medical Tourism)が紹介されていた.Asian Study花盛りの話題から,インドではどのような医療の実情を知りたいという好奇心が当然湧き出てくる.そこへ持ってきて,日経ビジネスオンラインの記事が目に付いた.その元ネタを辿ると,ムンバイでの素朴な質的研究だったというわけだ.

ムンバイ地元の医療関係者との面談を主な材料とする質的研究が,日本の元Director Medical Reviewerの目に止まり,アジア治験を考える大切な論文として紹介される.だからこそ,地域医療なのであり,臨床研究なのであり,質的研究なのであり,英語で論文を発表する必要があるのだ.

製薬各社、臨床試験拠点をアジアに展開 2008年3月22日/日本経済新聞 朝刊
 国内製薬各社がアジアでの新薬の臨床試験(治験)を加速している。日本よりも治験費用が安く期間も短縮できるため、第一三共は来月にもインドに初の臨床開発拠点を設立する。アステラス製薬は次期主力薬と期待する血栓症予防薬で、日本とアジアの共同治験に着手した。エーザイはシンガポールで臨床研究を開始した。国内の医療用医薬品市場は伸び悩みが続いているが、新薬の開発拠点としても空洞化が進む恐れがある。
 第一三共は、インドのムンバイに昨年春設立した販社に治験の統括機能を付け加える。まず数人の担当者を置き、順次増員する。インドで得た治験データは日本の新薬申請には使えないが、欧米で活用できる。

インド医薬業界、患者無視の癒着 製薬会社から医師や薬剤師に自動車の贈答品も 2008年4月4日 金曜日 日経ビジネスオンライン Buisiness Week

近年、インドでは製薬会社が高品質・低価格のジェネリック(後発)医薬品を大量生産し、次々と成功を収めている。また、インドはいわゆる“医療旅行”の目的地として急速に台頭してもいる。欧米並みの高水準の医療を安価で受けられることから、米国や欧州の患者が外科治療を受けにやってくるのだ。
 だがそうした成功の裏で、インドの医療は憂慮すべき一面を抱えている。製薬会社を取り巻く規制環境が不透明で、患者の健康管理に責任を負う政府機関が1つも存在しないのだ。
 規制当局の監視がないのをいいことに、製薬会社の強引な販売戦術がまかり通っている。医師、薬剤師、卸売業者は数々の高額な贈答品を受け取る。医師はその見返りに、患者のニーズよりも製薬会社からの奨励金を重視した薬の処方を行う。「医薬品の規制当局、製造業者、処方者が手を組み、無学で貧しい患者を食い物にしている。(後略)

(その原文)
Indian Pharma: Hooked on the Hard Sell
Doctors sometimes accept gifts and cash to push drugmakers' products irrespective of patients' needs. Activists want New Delhi to step in
Indian drug companies have racked up a string of successes in recent years, churning out high-quality, competitively priced, generic pharmaceuticals. At the same time, the country has emerged as a destination for so-called medical tourists?American and European patients who enter Indian hospitals for surgical procedures because costs are lower and quality of care is comparable to that in Western hospitals.
Unfortunately these success stories deflect attention from a parallel health-care reality that's far less glamorous: Drug companies in India operate in a murky regulatory environment where there's no single government agency charged with looking after patients' well-being.
Free from the scrutiny of regulators, companies sometimes engage in aggressive marketing tactics, including showering physicians, pharmacists, and wholesale distributors with expensive gifts. In return doctors may prescribe drugs based on company incentives rather than the needs of patients.

そして,上記に引用されているIndian Journal of Medica Ethicsの論文が下記だ.
Nobhojit Roy, Neha Madhiwalla, Sanjay A Pai. Drug promotional practices in Mumbai: a qualitative study. IJME 2007;4:57-61

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