それがどうしたSGLT2i
−かくしてCREDENCE試験は誇大広告となった−

SGLT2阻害薬に新効能! 心・腎保護薬へ:「衝撃の試験結果に米国ではガイドラインを改訂」とまあ,お祭り騒ぎもいいところなんだが,そりゃあ,あんた,プラセボより血圧も血糖も一遍に下げれば,心血管イベントが減るのは当たり前でしょうが(図はCREDENCE試験のSupplementary Appendixより).そう言っているのは私だけじゃありません.何しろ高血圧の専門家が太鼓判を押しているんだ.(SGLT2i「理想的な利尿薬」の可能性

CREDENCE試験の意義は,カナグリフロジンが血糖降下作用を持った降圧利尿剤だってこと,だから薬価もメトホルミンとヒドロクロロチアジドの配合剤と同じでいいと,極めて頑健なエビデンスを提供してくれた点にある.

それでも,なお,問題は山積みだ.そもそも,CREDENCE試験が示したエビデンスは,日本人には全く通じない.BMI一つ取っても,平均が31.3だ.(『壮年男性の体格の国際比較』によれば,BMIが25を超えると者の割合は日本が3割,米国では7割)糖尿病の罹病期間は平均16年.高血圧症はほぼ全例に合併しており,心血管疾患の既往も半数.同じ「糖尿病」といって,太平洋のこっちと向こうでは世界が違うことを忘れてはならない.

糖尿病の早期発見,早期治療など,おとぎ話.これだけ高リスクを負った被験者集団でなければ,プラセボとの有意差は出せない.そういう現実的な判断のもとに行われたのが,このCREDENCE試験である.

そんな試験の結果は少なくとも日本人の糖尿病患者にとっては,『衝撃』でも何でも無い.そもそも新効能がつくのは米国のカナグリフロジンの添付文書であって,日本の添付文書には一切そんな効能はつかない.それなのにあたかもカナグリフロジンが日本の糖尿病患者にも有効かつ安全性が担保されるがごとく風説を流布するのは,適応外使用を奨励する「誇大広告」以外の何物でもない.

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