目安に過ぎないPCR
感度は7割程度
「田村 格 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について」より抜粋)
 「Silent pneumonia」に関連して、無症候性を含む軽症者でも画像変化が認められることから、CT検査がPCR検査よりも感度が高いという報告がある【4, 5】。当院で経験した症例においても、無症候性を含む軽症者のCT検査で異常所見が認められている。また、クルーズ船内で濃厚接触となる同室の家族や友人等がPCR陽性で、本人もCT検査で明らかに他の症例と類似する両側末梢のすりガラス様陰影を認めるにもかかわらず、PCRが陰性となる症例を一定数経験した。そのような症例において、繰り返しPCRを実施すると陽性になる症例もあれば最後まで陰性のままの症例もあった。また、退院確認時の2回連続のPCR検査も、1度目は陰性であるにもかかわらず、2回目が陽性となる症例を数多く経験した。これらの経験から、PCR検査の感度はさほど高くないのではないかと考えられた。明確な検討はできていないまでも、感覚的には70%程度の感度ではないかと思われた。しかしながら、当院のように全例CT検査注2を行うかどうか、判断は難しいところである。
4)Fang Y, Zhang H, Xie J, et al. Sensitivity of Chest CT for COVID-19: Comparison to RT-PCR. Radiology. 2020 Feb 19.
5)Ai T, Yang Z, Hou H, et al. Correlation of Chest CT and RT-PCR Testing in Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) in China: A Report of 1014 Cases. Radiology. 2020 Feb 26.


検査をしても9割以上は「はずれ」の意味を考える
この図は、都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップに示された、PCR検査実施人数に対する陽性確定者数の割合である(2020年3月27日)。事前確率が十分に高くなるように、検査を行っているにもかかわらず6%を超えないのは、何もこの日に限ったことではない。仮にPCR検査の特異度が95%としても、事前確率が5%の集団に対して1000人検査を行う毎に50人の偽陽性者が発生し、現在プライマリ・ケア場面での診断確定の手立てがない以上、この50人は全て2週間の自宅隔離を強いられるとともに、濃厚接触者も検査を受ける羽目になる。

その一方で,「感度70%」の意味を考えてみる.感度100%の検査などありえない.どんな検査でも,「見逃し」はある,まして況んや急ごしらえの新型コロナ用RT-PCRとなれば,その性能に多くは期待できないが,一方で「使い道」もある.この図によれば,1000人検査すると57人が陽性になるわけだ.ところが感度が70%だから,57x3/7=24人の感染者が見逃されていることになる.この24人のうち何人かは後日症状が発現/悪化して再検後陽性となるかもしれないが,そういう感染者とて,再検査するまでは,「晴れてコロナ陰性」と喜び勇んで地域で生活できるわけだ.再検査に至らない例では行動制限に至ることはない.これは一見,危険なことのように思えるが、検査の限界なので誰にも如何ともし難い。しかし、その誰にも如何ともし難い検査の限界が、地域での集団免疫形成に役立っているかもしれないのだ。

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